福島県教育センター所報ふくしま No.92(H01/1989.8) -021/038page

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プロジェクト研究報告

事例を通した教育相談の進め方に関する研究


_予防的な指導援助(第1年次)_
(その2)

教 育 相 談 部

 本事例は当初「いじめ」の被害者と加害者になることが予測された二人の児童に対し,未然にいじめを防ぐべくかかわった実践例である。


1.予測した問題行動   「いじめ」

2.対象   小学校5年(A子・B子)

3.問題行動予測の動機

・ A子:孤立児,髪や服装はよごれがち。

・ B子:排他的グループの中心的人物。

・ ソシオメトリック・テスト(4月)結果よりB子はA子を排斥(A子はB子を選択)。また日頃B子のA子に対する乱暴な言動がみられた。

4.資料

(1) A子:気が弱く依存性が強い。成績は下位。家族の間でも無視放任され,生活態度は幼い。

(2) B子:勝ち気,わがままで見えっぱりだが涙もろい。成績は上の下で,母,祖母と3人暮らし(父は離婚前提で別居)。甘やかされて育った。

5.予測診断(診断)

 B子は最近両親の不和から情緒の安定を欠き,攻撃的になっている。A子はクラス内で一人ぼっちの寂しさから,B子にまつわりつこうとしているが,B子はA子にいらだちを増している。現時点で問題はないが,適切な指導援助がなければ,「いじめ」などの問題が起きることが予測される。

6.予防仮説(指導仮説)

 A子,B子に対する受容的な環境作りをし,本人の精神的な安定と自立のための意図的な指導援助を図れば,二人の人間関係の改善がされる。

《本人・家族・学級に対する指導援助の計画》

・ A子:学習の個別指導とA子が選択したC,D子と同班にし,受容的な中で自立心を育てる。

・ B子:不満感を吐き出させながら情緒を安定させ,温かな人間関係を作らせる。

・ A子に対する家族のかかわりを密接にし,髪服装など女の子らしい清潔なものにさせる。

・みんなで助け合い,支え合うクラス作りを通して,A,.B子の人間的成長をはかる。7.予防援助(指導援助)の経過

・ A子は,日常の班別学習の中でC,D子の積極的な協力により,漢字の書き取りや校内絵画展などで自信を持った。さらに個別指導による学力の向上と運動会などの係活動による本人の活躍の場を多く設定した。この頃から両親のA子に対する態度が変化し,家庭でもA子に対する援助が強化され,本人との信頼感が深まった。・B子については,クラスの雰囲気を和らげ,互いに認め合い助け合う大切さを話し,気持ちを引き立てながら本人を支えた。

・ B子の母に家庭訪問で,「今がとても大切です」と述べ,家庭でも支える工夫を話し合った。

・ 教育相談やグループ相談により,B子の不安を解消し,ふだんの言動にも注意をはらい,支えるような言葉かけを多くした。

・ 二人の成長を願って学習発表会にB子には白鳥,A子にはB子を介抱する村娘役を与えた。二人は熱心に練習し,発表会は成功した。都合により転校するB子のお別れ会で,A子は自分から希望し,お別れの言葉を述べた。二人の心が一つになった。

8.考察

 A,B子の立場や環境に応じて,予防的な対応を意図的に実施したことにより,「いじめ」を予防することができた。

(文責 穂積 邦明)


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