福島県教育センター所報ふくしま No.96(H02/1990.8) -010/038page

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所員個人研究ー(小学校 道徳)


「新しい発見」と「納得」のある道徳の時間をめざして

学習指導部 渡邊 博志


ここに学級担任にとって気になる調査結果がある。国立教育研究所がまとめた「道徳教育の基本動向と課題」(1985年)によると、「道徳の時間」は「結論が分かっている」と答える小学生の数が33%にのぼる。
一方、「道徳の時間」に対する教師の問題意識はどんなところにあるのであろう。当センターの道徳講座を受講された先生方があげている問題点の中で、集中しているのが「発言の一元化」である。(「道徳の時間の諸問題」)146名分の資料分析による。詳しくは拙論「新しい発見のある道徳の時間」参照)
二つの事実を重ねてみると、教師も子どもたちも同じところで悩んでいるように思える。「新しい発見」と「納得できる考えを得ること」の不足である。
本稿では、上記の問題点を改善していくための一方策について、次の資料を扱った授業の具体例を基に述べていく。

資料の概略
気の弱いめぐみとよし子は親友です。めぐみは何かとよし子を頼りにしています。そのめぐみが「優勝トロフィー」をこわしてしまったことを、よし子は見てしまいます。そのトロフィーは、球技大会で優勝した学級が預かり、次回に責任をもって返すことになっているものです。
帰りの会で「こわされた」ことが問題となりました。めぐみはうつむいたままです。よし子はどうしようか迷ってしまいました。兵庫教育大学資料:「けい子のまよい」を渡邊が改作」


1.自分をふりかえる視点を明確にさせる

価値に対する自分の見方、考えを授業前に整理させておく。
本実践(福島市立K小学校5年1組)では、授業の1週間前に「友情についての考え」を自由記述法で書かせておいた。この学級では、{困った時、お互いに助け合うこと:27度数}{やさしくすること:8度数}をはじめとして17項目の回答があった。
この授業前の友情観と授業後の友情観を比較検討させることにより「自分にとって何が足りなかったのか」 「新しい発見とは何か」をうきぼりにしていくのである。
また、一人一人の記述内容を座席表などに位置づけておくことは、価値に対する最新の実態把握でもある。指名構想の資料としても使うことができる。

2.理由づけの分類を話し合いの論点として生かす

最近、「価値観の類型化」を活用した道徳の授業が行われるようになってきている。しかし、子どもたちの考えは微妙に異な


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