福島県教育センター所報ふくしま No.96(H02/1990.8) -025/038page
きたわけでないから居てもいいよ」と笑っていうと、驚いたような表情をした。
両親と本人を前に教育相談をするのは始めてなので、笑顔とは別に内心は緊張の連続であった。
ここでは、「受容と支持、リード」を基本に、次のようなことについて話し合った。
・父親には
母親にとって、父親の留守中の子供の養育は、不安と緊張の連続であるから、帰宅したときは、苦労を認め、十分に支えてやる。
・母親には
「兄と比較されている」と本人が誤解しているようなので、本人のよい点を認め、励ます言葉かけの機会を多くする。
・本人には
両親の前向きの努力を理解させる。話し合いの中では、次のような言葉がそれぞれから聞かれた。
父親「もう少し、女房の話を聴くようにすれぱよかった。」
母親「T子とは話し合う機会すらなかったし、兄と比較していると思っていたとしたらかわいそうな気が・・・」
本人(黙って下を向きながら聴いていたが時々うなづくこともあった。)
「今後はこうしよう」という約束は何もしなかったわけであるが、学級担任のこの家庭訪問が、以後のT子の態度に影響を与えたことは、翌月の校内事例研究会の席上、各先生方が認めることであった。
6 事例からわかる家族へのアプローチ
ラポールの形成(本人、家族)
今回の場合は問題行動発生後の家庭訪問であったが、母親とのラポール形成を第一に考えたことが成功につながった。日頃から保護者とのラポール形成を心掛けておくことが大事である。
・親としての立場を尊重し、信頼感・安心感を与えること。
・親の話を聴きながら、気持ちを受容し、支持する。
・親と一緒に考えていこうとする態度を示す。
二次的な資料収集
問題の概要に即した資料収集は、指導援助方針につながる大事なものである。
指導援助の観点の明確化(方針)
どこを、どのように、どんな手立てでなどを明確にする。
各種技法をもとにした指導援助
親が自分から問題と子供へのかかわり方に気づくように援助する。
家庭への対応は難しいものとよく言われますが、児童生徒の問題行動が家庭に起因している場合、家族へのアプローチが不可欠なものとなります。今回は、ごく一般的な取り組みを紹介しましたが、ラポール形成を基盤とした積極的な家族への指導援助に、少しでも役立てて頂ければ幸いです。