福島県教育センター所報ふくしま No.97(H02/1990.11) -012/038page
提言
新しい科学技術教育の充実をめざして
科学技術教育部長 礒部 紀郎
交通や情報の発達により私たちの生活は大変便利になった。自動車があればいつでも、どこへでも行くことができる。テレビのスイッチを入れれば世界中のニュースを即座に見ることもできるし、パソコンがあれば電話回線を使って外国の情報を得ることもできる。しかし、この便利さとは裏腹に、排気ガス公害や騒音公害、プライバシーの侵害やコンピュータウイルスなど、今までになかった新しい問題が生じている。科学技術の発達は私たちの生活を豊かに、便利にすることができたが、それに伴う陰の部分も見逃すことはできない。そして、私たちの生活や社会は急速度に変化しており、子供たちが未来に向かってたくましく生きるためには、生涯にわたって学習をしなければならない。この基礎を築く学校教育の在り方を、学校の現状を踏えながら考えてみる。
まず、児童生徒の科学への興味関心が薄れてきているのではないかということである。先日の新聞に「生徒の理科離れ」が進んでいるという記事がのっていたが、これが事実とすれば大変憂慮すべきことである。ある生徒と選択科目について話し合ってみると、本当はA科目が好きなのだが内容が難しく、テストの際不利になるのでB科目にしたというのである。これは、最初から「ダメ」と決めてしまい、努力を避けているケースであるが、もしこのような生徒が増えているとすれば問題である。
次に、中学の技術・家庭科、高校の家庭科は、新学習指導要領により男女とも各領域、科目を履修することになった。学校での指導体制、指導内容の研究、施設設備の整備をどうするか、さらに、男子校での対応の検討が進められている。
さらに、学校教育の情報化への対応の育成と教育に関する情報についてである。学校にパソコンを導入することがそのまま情報化対応に結びつくとは言い切れないが、少なくともパソコンの導入は、今後ますます進むものと思われるし、これからの社会に生きる子どもたちは、情報やコンピュータに関する学習を避けて通れないと考えられる。先般、当部では教育に関する情報の実態調査を実施したが、どのような情報を必要としているかという問いに対し、教科指導に関するアイデア情報、教材開発に関するアイデア情報、教務に関する情報、児童生徒指導に関する情報が必要であると答えている。このように学校では、教育に関する多くの情報を必要としているという実態が浮かびあがってきている。
以上のような現状を踏まえ、当部では次の点に努力している。