福島県教育センター所報ふくしま No.99(H03/1991.6) -024/038page
図の現在からは、「いつもしてくれる」「ときどきしてくれる」を合わせても、小学生55%、中学生66%、高校生64%にしかなりません。小学生の意識が少し低いのは、社会性がまだ確立されていないからではないでしょうか。
将来への向上心を高めるためには、所属と愛情は大切な欲求なのですが、今後への期待も、小学生・中学生・高校生ともさほど大きくなく、あきらめともとれる意識が伺われます。
これらの実態をふまえ、どのような指導援助の方法があるか、その在り方を事例を通して考えてみましょう。
所属感を育てる指導援助の事例
事例は、中学校1年生を対象に、学級担任が行った「所属感を育てるための指導援助」の報告です。
実践の前に
X市郊外の中規模校1年生36名を担任するA先生(34才男子)は、問題行動に対する今までの対症療法的指導援助は、教師にとって避けて通れないものとあきらめつつも、何か本来の教育を忘れているような寂しさかありました。 そこで、今までの学級を見つめ直したところ、次のようなことが感じられました。
●今までの指導援助でも、確かに問題行動は改善することはできた。
●教科担任からは、静かな雰囲気で、授業がしやすいと言われることが多い。
●リーダーは、担任の指示通りに進めても級友からの反発は少ない。
●問題としては、学級全体の成績が思うように向上しないことであるが、学級の雰囲気に原因があると考えられる。
このように見ると、特に問題のない学級のようですが、次のような課題が存在することにも気がつきました。
●何も問題のない学級にすることが学級経営の最終目的ではなく、一人一人の生徒の能力をより高めてやる必要があり、そのためには 学級全体を客観的に把握する必要がある のではないか。
●静かな学級というのは、中学校1年生の段階で喜ばしいことなのだろうか。あまりにも担任として縛り過ぎていないだろうか。学校行事のクラスマッチになぜか燃えないことからも、 学級の成員としての一人一人の所属感を高める必要がある のではないか。