福島県教育センター所報ふくしま No.99(H03/1991.6) -026/038page

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いました。一方的な説明だけでなく、みんなの意見を聞きだす努力をしたり、学級集団の内面がばらばらであることを考えて、「エンカウンター」を取り入れたりしてみました。どのようなグループを構成しても、当初は、「これが同じ学校の生徒か」と思いたくなるような他人行儀なものでしたが、副担任の応援を受けながら、とにかく続けました。
さらに、個別面談を実施するに当たり、次のような約束をしました。
●文化祭を目標に、先生を含めて、みんなで学級を明るくまとまりのあるものにすること。
●みんなが悩みを持っていることがわかったので、全員に面談を実施することが、いつでも誰でも何でも相談していいこと。
●みんなにわかってもらいたいことは、班別の交換ノート[心」に書くこと。それは班員全員と先生が読むことにするが、自由に感想などを書いてもいいこと。

そして生徒は


 担任による新しい指導援助の試みは、生徒にとって大きな驚きであり、当時はそれがためらいとなって表れてしまいました。
 しかし、10月中ごろになって、文化祭へ向けて学級が一つにまとまっていこうとしていると感じるようになりました。
 エンカウンターでは、生徒の声や動作が大きくなり、自己主張する姿も見られるようになりました。(何よりも、笑いが多くなったことがうれしいことでした。)
 班ノートには「同級生の新しい側面の発見」に関する記述や「この学級でよかった」などの感想が見られるようになりました。
 文化祭の一環としての弁論大会では「我らが学級」という題で、代表が「学級の良さ」について発表したり、合唱コンクールでは、優勝できなかったにもかかわらず、満足そうな笑顔が見られました。
 A先生は、個別相談を実施している中でも感じたそうですが、とにかく、この学級は変わったのです、「所属感・まとまり」については、大きな成果を上げることができたのです。

事例から学ぶこと


 事例の中の実践は特別なものばかりではなく、どこでも行われていることかも知れません。
 しかし、A先生は、失敗を責めたり誰かの責任にすることなどなく、お互いを理解し合い、存在を認め合う学級経営をすることで、一人一人の所属感を高めることができました。A先生の取り組みがなかったら、表面的には静かな良い学級というだけで、このような変容はなかったでしょう。
 「指導援助」は、「これでよし」ということはなく、一人一人の児童生徒が「将来への向上心」を持ち、努力する姿を目指して常に行うべきものであることを改めて考えさせられました。
 今回の事例は、中学校1年を取り上げましたが、小学校、高校においても、それぞれの実態に応じた工夫が考えられます。
 教育相談部でも、有効な指導援助についての研究を続け、これからも紹介していきたいと思います。


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