福島県教育センター所報ふくしま No.100(H03/1991.8) -002/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

特別寄稿(論説)


生涯学習研修センター 理事長 新谷政一

「生涯学習」の中核としての学校教育

生涯学習研修センター 理事長
(全国教育研究所連盟副会長)

 新 谷 政 一

1. 「生涯学習」への道標  昨年(1990年)はユネスコの国際識学年で、識字運動が世界的規模で展開された。現在推定されている世界の非識字者数は、世界総人口のおよそ17%、9億人余りで、そのうちの約70%、6億人余はアジア地域の人々である。これに対し、わが国における非識字者数は、日本総人口のわずか2%強に過ぎない。
 このように、日本国民の教育程度は、世界の中でもすこぶる高い水準にあると思われるのに、いま、なぜ、生涯学習が強調されるのであろうか。
 昭和62年8月7日の臨時教育審議会(臨教審)の最終答申は、いまやわが国は”成長から成熟の段階”に入りつつある、との認識の下に、
1(囲み文字)学歴(学校暦)偏重の風潮を是正するために、学校暦と同様に「学習暦」をも評価すべきこと(どこで学んでも、いつ学んでも、その成果が適切に評価され多元的に人間が評価されるよう、人々の意識を社会的に形成していく必要がある)
2(囲み文字)教育の総合的なネットワークを形成すること(国民所得水準の向上、自由時間の増大、高齢化の進展などにより、生涯の各時期、各領域において、人々の学習意欲が高まり、学習需要は高度化、多様化している。これに対応する必要がある)
3(囲み文字)科学技術の高度化、情報化、国際化に応ずること(社会の変化は知識、技術はもとよりのこと、情報体系の発展と再編成を促し、 産業構造、就業構造を絶えず変化させており 新たな学習需要が生まれてきている)<傍点新谷>
4(囲み文字)学校、家庭、地域の教育機能の役割と限界を明確にし、相互の連携と協働を図ること(とくに適時適切な 「しつけ」を行うことは、家庭が果たすべき重大な責務 である。この観点から、家庭を学校、地域と並ぶ生涯学習の場としてとらえ、その教育力の回復を図る必要がある)<傍点新谷>と、提言している。
 私たちは、この臨教審答申を玩味(がんみ)することによって、日本社会の急激な変化に対応し得るであろう「生涯学習への道標」を、見いだすことができるのである。

2. 「生涯学習」の全体像
 1965年にユネスコが「生涯学習」を提唱した当初の頃は、成人教育・社会教育の色彩が濃厚であった。しかし最近、カナダやアメリカでは「生涯教育」という表現よりは「永続教育(継続教育)」という言い方が多くなってきているといわれるし、ユネスコの経済協力開発機構(OECD)にお


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。