福島県教育センター所報ふくしま No.100(H03/1991.8) -036/038page
教育図書・資料紹介
新小学校学習指導要領の趣旨を生かした
算数の授業を展開するために学習指導部 小 林 正
○個性を生かす算数授業
清水静海 著 明治図書
いよいよ平成4年度から新小学校学習指導要領による教育課程が実施されます。指導書に述べられている改訂の趣旨を理解し、日々の授業実践に臨まなくてはなりません。
さて、小学校指導算数偏の第3章には「指導計画の作成と内容の取り扱い」について解説されています。さらに項目2には「各学年にわたる内容の取り扱いと指導上の留意点」についての解説があり、その中の(1)は「問題解決及び具体的な活動の重視について」述べられています。
ここでは大きく3つのポイントが挙げられており、その1つが「児童自ら考える場における指導の充実」であります。そして、その具体的な方法として次の5点を挙げています。○教材研究の工夫、○自力解決の場と時間の確保、○学習の手だての多様化、○集団解決の場の充実、○評価観の見直しです。
この5点について詳しく解説されているのが本書です。著者は、文部省教科調査官として幅広い活躍をされており、「個性を生かす教育は、基礎的・基本的な内容を身に付けさせる過程を通して、さらにそれを基礎として子ども一人一人が個性を発揮しつつ生きることができる力を育てることを目指しているといってよい。」と述べています。これからの算数教育のあり方について具体的に多くの示唆を与えてくれる良書であると思います。○個人差に応じる算数の指導(低・中・高)
杉山吉茂・清水静海 偏著
東洋館出版社
日々の算数の授業において、おおぜいの子どもを相手にして、個に応じることなどできるはずがないと、はじめからあきらめている教師もいるようです。個人差に応じた学習指導の実践的な研究例を知ってても、その難しさ、面倒さに圧倒されている教師もいるようです。本書は、そのような教師にも、個に応じた学習指導のあり方について示唆を与えるべくまとめられています。
本書の内容構成は、「I章 こうすればできる個人差指導、II章 ここが違う個人差指導、III章 よりよくするための(個人差を配慮した)指導実践例、IV章 今後の研究のために」となっています。I章・IV章は、低・中・高学年ともに同じ内容になっています。実践例も豊富であり、興味のある学年から読まれることをお勧めします。
著者は「個に応じる学習指導に挑戦する人の道しるべとして、この本が役立つことを願っています。」と述べています。ぜひ日々の実践に役立てたいものです。