福島県教育センター所報ふくしま No.101(H03/1991.11) -013/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

所員個人研究

−不登校児の運動を通した信頼関係づくりから
段階を経た集団への適応指導について−

教育相談部   遠 藤 美代子

◇ 研究の趣旨
 相談に訪れる子どもたちにとって,見知らぬ相談者との面接は,互いの信頼関係を築くことが極めて大切である。
 問題を抱えて来所する子どもたちの多くは,自分のカラにとじこもり,なかなか心を開こうとはしてくれない。そうした子どもの不安や緊張をときほぐすのに身体的活動が効果を上げる例は多い。
 このようなことから,「不登校」の事例をもとに,運動を通して児童との信頼関係を築いていくとともに,段階を経て学級集団へ適応させるための取り組みについて研究した。
◇ 事例
1. 対象児S男小学6年生
2. 主訴不登校
3. 問題の概要
<初回面接から(7月)>
・小学1年生の夏休みに,二男が生まれ,その頃から「不登校」気味となり,5年生までの間に何度か繰り返していた。
・本来明るいが,非常に神経質。人には優しく接する。
・肥満体であるが,スポーツが好き。
・学力が低く,そのことで友達から何か言われたりすると,ひどく気にする。
・少年会ソフトボールでは活躍した。
・休む前はクラスの人気者で,友達がたくさんいたが,休み始めてからは,仲良しの子とも会えなくなった。
・8人家族で,兼業農家のため,母親も多忙である。

[家族構成]
[家族構成]


4. 初回面接の考察
・小学校に入学し,家庭から離れ不安な気持ちのところに二男が誕生し,母親の関心がそちらに向けられたため,ますます不安が増大していったものと思われる。性格的に思いやりがあり,優しいが,周囲の言動に敏感に反応を示す。特に学習場面での劣等意識が強いため,集団の中に入れなくなったと考えられる。しかし,運動に対する関心は高く,からだを動かすことを好むことがわかった。
5. 指導方針
〇不登校状態によって生じている心理的ストレスを除去するために,相談の際には,毎回運動を取り入れて,賞賛(認め,褒めてあげる)することを心がける。このことによって,心理的葛藤が解消し,情緒の安定が図れるようにする。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。