福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -008/038page
理にも起因するので,以下は干割れ・幅反りの原因について述べる。
同様に,a・b・cの各点は収縮後(変形後)の丸太の外周,板の木表,板の木裏のそれぞれの輸郭の1点を示す。
木材は乾燥に伴って収縮するが,図1に記載してあるように,収縮率が方向によって異なっている。接線(円周)方向と半径(中心)方向の収縮率がほぼ2:1である。
方向によって収縮率が異なっていることが,干割れや幅反りなどの変形が生じる原因となっている。
3. 研究の概要
(1) 輪郭線と各点との関係
以下の記述は,接線方向と半径方向の収縮率の比がほぼ2:1という前提で進める。
図3のA点は収縮前の丸太の外周の1点,B点は収縮前の板の木表の輪郭の1点,C点は収縮前の板の木裏の輪郭の1点を示す。
収縮(変形)によって,A点はa点に,B点はb点に,C点はc点にと移動(収縮)する。その時の半径方向の収縮率をk%とすると,(OA一Oa)/OAxlOO=kという関係になる。そのとき,接線方向の収縮率は2k%であり,(α一β)/α×100=2kの関係にある。
(2) 画像表示に関する考え方
図3のA・B・Cは任意の角度αを示す直線OAにのっている点である。その点が乾燥収縮によって,OAよりk%短く,αより2k%小さい角度βを示す直線Oa上のa・b・c点に移動する。
そこで,図3のa点,b点,c点を小さい角度ごとに数多くプロットしていけば, a点の集合は収縮した丸太の外周を,
b点の集合は収縮した板の木表の輸郭を,
C点の集合は収縮した板の木裏の輪郭を
描くことになり,全体として収縮した丸太と板を表示することができると考えた。
つまり,A・B・Cの各点とa・b・cの各点の位置の座標を求めることができれば,収縮変形した板を模擬的に表示できるのではないかと考えた。
(3) プログラムの概略
1.メニューの選択によって,前に表示した画面の上に重ね書きしたり,また,前の画面を消してから新規に表示できる。
2.図4の1画面を約5秒くらいで表示できるので,数分で数回の操作ができる。
3.板の位置を中心の方へ近づけたり,板の厚さを変えることも可能である。
4.ぶな材の半径方向の最大収縮率は約6%であるが,このソフトウェアでは変形の度合を強調するために,収縮率をやや大きめ(9%)に設定した。