福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -015/038page
平均が漸減している。すなわろ,情意面の内化傾向が表れていると考えられる。・価値づけのレベル以降には性差が見られる。すなわち,問題解決学習などの指導には,この性差を生かすことが必要である。
図2によると,回帰点の集合線より上の生徒ほ認知面の学力に比べて情意面は内化傾向が進んでいると解釈できるから,該当する生徒の学習方法を改善していけば,よりいっそうの学力向上が期待できることになる。一方,回帰点の集合線より下の生徒は認知面の学力の割には数学に対する受け入れ程度に問題があると解釈できるから,該当する生徒の興味・関心の程度に合わせて数学という教科・教材の意味が理解できるような指導を進める必要がある。
2. 使いやすさと解釈しやすさ
ア 使いやすさについて
全20項目の測定用紙であるから,短時間で実施できるという意味では使いやすい。だが果たして生徒の本音を測定しているか一抹の不安がある。一般的には虚構項目によって回答がより本音か否かを判定している。ここでは項目数を増やさないで測定したいので,生徒の回答状況と教師の観察結果との比較において判断できる資料を作成するため,次の処理方法を考えた。
まず,各レベルごとの得点に対して,ある一定の得点以上には“十"を,逆に,ある一定の得点以下には“一"をつけ,その様子によって内化傾向を診断しようと試みた。その結果,レベルが深化するにつれ,おおむね“十"が減少していく傾向が見られるが,中には内化したレベルにのみ“十"が表れたり,内化の途中で消えて再び登場するなど,この方法では情意面の内化傾向を必ずしも把握しきれないことが明らかになった。だが,本処理結果と各生徒の日常の授業態度とを対比させると,今後の指導の在り方の改善に役立てることができる。
イ 解釈しやすさについて
情意面の内化が進んでいる生徒の認知面の学力はそれに比べてどうなっているかを知るために,次のような処理を行った。
ア) 各レベルの得点に、重みをつけてこれらを一元化し,「重みづけ総点」を求めた。
イ) この重みづけ総点と認知面の学力との相関係数を求めたところ,おおむね強い相関があった(男子は.643,女子は.523)。
ウ) そこで,認知面の学力をX変数として回帰点を求めて,実際の重みづけ総点と比べた(図2(横軸;学力))。
まとめと今後の課題
信頼性の一つである内部の一貫性は非常に高かった(.826)。構成概念妥当性や他の信頼性については現在検討中である。また学年の発達段階に応じた項目による測定用紙を早急に完成させたい。