福島県教育センター所報ふくしま No.104(H04/1992.8) -002/038page
特別寄稿(論説)学習指導とコンピューター
国立教育研究所教育ソフト開発研究室長 堀口秀嗣
1.コンピュータの普及と学習指導における利用の多様化
米国ではCIA(Computer Assistted Instruction)の研究が始まったのは1958年である。まだコンピュータが発明されて10年余りの時だけに、汎用コンピューターに末端としてタイプライターがついただけの状態で、文字だけで対話していた。それでも教育に有効であると考えていたことは注目したい。そのころの教育利用は、高額なコンピュータを導入し、技術的にも大変な苦労をしてまで利用するからには、コンピュータでなければできないことを行いたいという願いがあったことは想像できる。
日本で最初に実践的なCIAシステムを学校に導入したのは、東京の葛飾区立常盤中学校で、1973年ごろである。当時の教育の1つの期待であった学習の個別化の実現から、CIAの研究が行われた。
その後、パソコンの出現とソフトウェアツールの充実から、コンピュータを利用することが、高価なもの、大変なことをしないとできないことではなくなっていった。さらにソフト面でも学校教育をターゲットとしたものが市販されるようになり、改訂を繰り返すことにより質的な向上も見られ、実際に授業で利用できるソフトが増えてきた。そこで、学習指導でコンピュータを利用する考え方、目的、範囲に広がりが出てきた。その結果、チュートリアル、ドリル、問題解決といった従来のCIAの視点からとらえた分類ではあてはまらないものも出てきて、新しい分類が必要になってきた。
表1 ハードウェア整備状況
(単純に伸び率で考えると、平成3年度末には
中学校90パーセントを超える見通しとなる)
表2 ソフトウェア保有状況