福島県教育センター所報ふくしま No.104(H04/1992.8) -012/038page
所員個人研究
集団不適応の傾向にある生徒への指導援助
〜班活動を通して〜
教育相談部 伊 勢 英 子
1.はじめに
近年,学校生活に適応できないために,悩み苦しんでいる生徒が増加の傾向にある。当教育相談部にも,不登校に関する相談が増え,その内容も深刻で長期化している。これらの問題の多くは,やはり学校生活への不適応が原因であると考えられる。本研究は,こうした現状を踏まえ,研究協力校(中学校1年生)における「適応性診断検査」から,特に「不適応傾向」を示す生徒を対象に,班活動を通しての指導援助の在り方を探るものである。
2.研究の見通し
班活動の中で,本人の特性を生かした役割を与え,自発的に活動できるようにグループ面接を通して援助し,その成果を認め,自尊感情や,所属意識を持たせていけば,班の成員からの信頼が得られ,活動の意欲も高まり,集団の一員としての自覚や,集団へ適応しようとする意欲を高めることができるであろう。
1.班活動について
生徒は集団に所属したいという基本的な欲求を持っている。この欲求が充足されない場合に,フラストレーションを起こし人格の健全な発達が阻止されると言われている。学級という大集団では,人間関係も表面的,形式的になりがちであるが,少人数の班活動は,仲間どうしの相互理解が比較的,容易であると考えられる。
2.集団不適応の概念について
「適応」(adjustment)とは,自らの欲求を満たすために環境に対して適切な働きかけができ,それに対して環境から肯定的な反応や,評価が与えられ,結果として情緒的に安定している状態である。
「不適応」(ma1adjustment)とは,逆に環境に対して有効な働きかけができず,周囲から否定的な評価を受けている状態で心理的な不安定感を伴うことが多い。
「適応」がうまく行われないことの結果が「不適応」の状態であり,「不適応」行動である。
そのようなことに至る過程については,次ぺ一ジの<表1> のように考えることができる。