福島県教育センター所報ふくしま No.104(H04/1992.8) -015/038page
担任は常にプラスのストロークでS男に接し,不安定な情緒面の改善に意識して当たる。 (プラスのストローク:温かい表情・言動)
プラスのストロークは,特にS男には必要である。活動自体が学級集団に役に立っていることに気づかせ,自己存在感を実感させていく機会でもある。
S男が快く司会をするようになり,学級に個や集団を温かく包む支持的な雰囲気が確立されつつある。
短時間ではあるが,朝の会の司会をさせることにより,集団のリーダーとしての立場に誇りを持たせて,自己への適応を図る。2. 体育係として
指導援助の流れ(球技大会) S男の様子 ○学級のみんなから体育係に推選されたとき、励まして自信を持たせる。
○校内球技大会の練習の過程の中で,いくつかのトラブルが見られたが,面接を何度か行い軌道にのせる。
○班日誌をつけさせ,援助の方法や励ましを与える。
○大会での活躍の中で,「さすがS男」との声がかかり,大会結果,第3位となり自信と誇りを持たせる。○あこがれの係りに推薦されうれしさや恥ずかしさ,やる気が表惰から見られた。
○ラインを引いたり,ボールを準備するなど張り切っていた。やる気が動きから連日見られた
○班日誌には必ず,目分の係の反省を書いた。落着きが出てきたようだ。
○「よく勝ったなあ」と言われて「係に協カした皆のカ」と言わんばかりのいい顔をしていた。
4. グループ面接や班会議などで,人の話を傾聴するような姿勢が見られるようになり,短学活の司会も積極的にするようになった。
(4) S男の変容
1. 周囲への配慮が見られるようになった。その変容がエコグラムのNPの上昇からも読み取れる。
2. 自分の不安や不満を本音で話すようになり,内気な生徒へのいたずらが以前より少なくなった。
3. 学級の体育部長という立場に誇りを持ち,授業に遅れる級友に対しても,「早く着替えろよ,みんな待ってるんだから」などと注意をするようになり,係としての自覚が以前より見られるようになった。(5) 指導援助の成果
1. きめの細かい指導援助の手を差し伸べることによって,集団への適応力が身についていくことが実証された。
2. 班活動を活発にすることは,活動の中で友人の悩み苦しみに共感したり,みんなで決めた約束を守ったりという規範意識が養われつつある。
3. 班の代表としての意欲づけや仲間意識が,大きな集団の中での適応を促がし比較的安定した言動を示すようになった。(6) 今後の課題
1. 不適応傾向を早期に発見する手だてを工夫する。
2. 適切な指導援助の内容・方法を研究する。
3. 班活動に取り組めない生徒の指導援助の研究を深める。