福島県教育センター所報ふくしま No.104(H04/1992.8) -029/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

指導援助の実際

(1)指導方針
1. 男の問題行動の背景にある要因をとらえるとともに,指導援助の方向について具体的な方策を考え.その実践を図る。
2. B男に対する担任の働きかけが十分にできるよう,学年の教職員の共通理解をはかり,協力を得る。
3. 家庭との連携を強化する。
(2)指導の経過

〔家庭環境の見直し〕

<両親への働きかけ>
 B男の問題行動とその背景にあるものを両親に等しく理解してもらうよう,これまでB男の支えになっていた姉二人の協力を得て,担任は家庭訪問を続けた。何も知らされていなかった父親の理解を得ることは極めて困難であったが,回を重ねる中で父親は問題の重大さを理解するようになった。
 そして,自分たち夫婦間のトラブルがB男に動揺を与え問題行動を起こしていたことに気付き,夫婦で一緒にB男の気持ちを理解し,問題解決のために行動しようとする心が見えてきた。

〔B男の心を開かせる手だて〕

<学校に関心を向けさせる>
 学年の協力を得て家庭訪問を続け担任としてのかかわりを深めた。学級の様子や学校行事のことなどを話し,学校への興味や関心を高めるようにした。そうした経過を経て,2年の2学期後半になると,「行ってみようかな…明日は」という返事をするようになった。しかし,朝はやはり起きることができない。それは,夜中,暴走族仲間との行動,シンナー,不純異性交遊などに心が奪われていたからである。
 その後も家庭訪問を続けた。3学期以降になるとB男はさらに気軽に話し合えるようになった。そこで,修学旅行の計画立案に参加するようB男を誘い,登校を強く促した。「修学旅行には行きたい」と話すが容易には登校できない状態が続いた。
 その後,両親の関係がよくなってきたこともあり,3人の友達の誘いも功を奏して,B男は修学旅行に参加することができた。旅行中は,班員とともに協調的に行動する姿が見られた。このことがきっかけとなり,ときどき登校できるようになった。しかし,それも,保健室まででまだ教室に入ることはできない。

<興味・関心を引き出す>
 現在の生活から他に輿味を向けさせる目的で,打ち込めるものはなにかをB男と話し合った。以前から,カメラには興味を持っており,撮影の技法にまで話が及んだ。その後,撮影のため,日中外出することが多くなった。
 作品の出来栄えを褒めると,B男はうれしそうに笑顔を見せ,満足気であった。

<将来に目を向けさせる>
 ある日,B男と保健室で教育相談を行い将来のことについて話し合った。
「ずいぶん勉強遅れたな…。」とボソッと


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。