福島県教育センター所報ふくしま No.105(H04/1992.11) -011/038page
溶質の分子量を求める実験を行う。溶媒としてベンゼン,溶質としてナフタレンを用い,温度を自動計測しグラフを描いて凝固点を求める。
【実験の結果と考察】
実験結果は表3のとおりである。ベンゼンの凝固点は,本実験では5.7℃であった。測定値に少しゆらぎがあるため何度を凝固点とするかで若干変わるが,ナフタレンの分子量は,よい値が得られた。本実験でも,測定結果を直ちにグラフとして見ることができるため,溶液の温度の下がる様子,過冷却の様子,溶液に振動を与えると一斉に沈殿が生じ同時に温度の上昇する様子,などがよく分かった。(図4)また実験に使用する液体が少量ですむため,実験時間を大幅に短縮できた。
(4)エタノールの沸点の測定
中学校の理科第一分野にエタノールの沸点を求める実験があるが,温度センサを用いて自動測定しグラフを描くと,温度の上昇する様子や,沸点が一定になる様子がよく分かる。うまく使えば生徒の理解を深めるのに大変効果があるものと思われる。4.まとめ
本研究では,RS-232Cを利用するADコンバータ(AD-232)がどのように化学計測に利用できるかを調べた。今回は化学電池に関する電流測定と,熱電対を使用した温度測定を行ったが,いずれの場合も測定やデータ処理が簡単にでき,よい結果を得ることができた。
本研究から次のようなことが分かった。
(1)AD-232は,簡単な化学計測に十分に使える。
(2)熱電対は,測定する物質の量が少なくてすみ,リアルタイムで温度を測定することができるので便利であるが,測定する範囲が極めて局所的なので,液体の場合にはゆらぎを生じる。複数回測定して平均を取るといった処理が必要である。
今後の課題としては,次のようなことがあげられる。
(1)圧カセンサなどいろいろなセンサを用いた実験の開発
(2)データ処理の工夫
またコンピュータを使うときには,ただ便利だというだけでなく,どのように使えぱより教育効果をあげることができるのかを常に考えなければならない。これも今後の課題の一つである。