福島県教育センター所報ふくしま No.105(H04/1992.11) -023/038page

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 脱感作法を行う過程で,次のように本人の活躍する場面を意図的につくり,周りから認められるようにした。

○ 算数の授業中,意図的に指名し,その発言に対して「用語を正しく使い,順序よく分かりやすい説明だったね」とほめる。級友からも「とても分かりやすかった」との意見があり,Y子はにこにこ顔であった。
○ 放課後,ロッカー係として友達と二人で廊下のロッカーを水ぶきしていたので,「ていねいな仕事ぶりだね。明日からまたみんなで気持ちよく使えるね」とほめる。ほめられ,てれくさそうな顔をしていた。翌日,学級朝の会で前日の二人の仕事ぶりを紹介した。その後,Y子は休み時間に一人っきりで座っていることが見られなくなった。

(6) 指導援助の結果と考察、平不安軽減の理由として,次のことが考えられる。

図1 逆制止経過記録表
図2 不安傾向診断検査


1. 系統的脱感作法の開始時に担任とのラポールが形成され,Y子が不安を解消するために不安の消去に主体的に取り組んだこと。
2. 各セッションごとに不安の減少程度を数量化して示したことが,Y子の自信回復に効果的に作用したこと。
3. 担任からの授業での意図的指名と級友からの認め,係活動での積極的な取り組みへの賞賛により,Y子が学級での存在感を感じ始めたこと。

5.まとめ

 研究協力学級での実践を通して,過剰な不安を抱く児童へ不安階層表を用いての脱感作法による指導援助は,不安を軽減させることに有効であった。また,児童が短期間で不安を軽減し,人間関係を改善できたのは,教師が,励ましや賞賛をしながら,児童の不安を感じる場面に意図的積極的にかかわっていったためであると思われる。


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