福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -003/038page

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力> の育成にあるといえます。さらに自己指導能力の育成には,(1)生徒に自己存在感を与えること,(2)共感的な人間関係を育成すること,(3)自己決定の場を与え,自己の可育継の開発を援助することの3点があげられています。生徒一人ひとりの存在を,かけがえのないものとして尊重することは教育相談の基本であり,教師と生徒が相互に人間として尊重し合うことで,真に共感的な人間関係カ清成されるものと思われます。さらに生徒自身が決断し,実行し責任をもっ行為の積み重ねによって,自己指導能力の育成が図られることになります。

2.現代の学生像

多くの大学闘系者があげる現代の学生像には,かなり厳しいものがあります。基本的な学生の生活態度にっきましても,「自己中心的で,当事者感覚が乏しく依存的である。キャンパスで楽しく過し,楽に卒業しようとし,楽勝コースの講義に学生が集まる。長年の進路チ鱒の結果,否定的な自己理解による諦観をもち,課外活動はハードな運動部系を敬遠し,気楽な同好会を好み,友人関係は広がるが深い交友関係を求めようとはしない」等という批判は,大学関係者が一致して述べる現代の学生像であると思います。
 学生の無気力,無関心,無責任カ、三無主義といわれましたのは昭和45年頃ですが、その10年後には無感動,不作法を加えた五無主義や学生ダメ論が大学関係者によって取りあげられました。また,現代の学生は没個性的で,どこを切っても同じ金太郎飴のようで,ひたむきな情熱を欠き,常識的で外面的には良い子が多い等という指摘もあります。1990年度国民生活時間調査報告書(NHK放送文化研究所世論調査部,1991.)によりますと,平日の学業時間は大学生が4時間53分,高校生が8時間6分,中学生が9時間7分,小学生が7時間18分で,大学生の学業時間が最も短く,中学生が9時間を超えています。さらに,土曜日と日曜日の学業時間も中学生が最も長時間で,中学生の土曜日は7時間28分,日曜日は4時間4分で,大学生は土曜日が3時間1分,日曜日が1時間41分と最低を示しています。「残酷な15の春」という言葉がありますカキ中学生の学業時間の長い点は気になりますし,中学生の半分以下という大学生の現状は,決して喜ぶべき状態ではないと思います。
 共通一次試験が始まって以来全国の各大学で不本意入学者や無気力学生の増加カ指摘され母親の過保護による母子分離不安や,学生自身の幼稚化・未熟化傾向,対人闘系困難を訴える者,過食や拒食を繰返す女子学生等,キャンパスの問題として取りあげられています。学生それぞれが能力を十分に発揮して,将来社会の一員として貢献することができるように,学生個人に与えられる援助計画のすべてを「学生補導(SPS)」と称し,国公私立いずれの大学でも,学生部の学生課や厚生課の主要な業務となっています。学生補導は,大幸における教育の一環であり,大学教育を離れて存在する単純なサービスではないといわれています。
 いわゆるキャンパスの症状群とよばれています大学生の問題行動は,思春期の発達課題が先送りされ青年期後期の課題として現われているという説があります。こうした考えに立ちますと,従来から学生相談の主要な方法とされていますカウンセリングによる援助活動でも,十分な対応ができないのではないかと危倶するむきもあります。つまり,青年期の発達障害の特徴として「悩めない若者」が増えているというわけです。悩みを解決する過程で,若者は成長していくわけですが,何事にも悩むことのない若者に,糖神的な成長を期待することはできません。中学・高校の生活は全く順調そのもので,大学受験も特に悩むことなく入学した女子学生が,恋人とのトラブルから過食が始まり,家族に伴われて専門医の治療を受ける事例は珍しくありません。また,有名大学への合格を両親に期待された男子学生ば浪人覚悟で一流大学を受験する必要はないと,地方都市の大学に合格して下宿生活をはじめ,一方的に親子関


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