福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -005/038page

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所員個人研究

生徒一人一人の興味関心に応じるコンピュータ利用の教材開発

〜理科におけるマルチメディア教材〜

 学校経営部  唐木義則

I はじめに

通常CAIを中心にした学習の流れは,階層構造によって構成されている。つまり,学習のねらいを達成するため下位目標を設定する。さらにその下位目標を達成するため下位目標行動を設定し,学習すべき項目を配列する。そして,論理の展開順に従い,学習活動が行われる。
 しかし,人間がある問題を解決するための思考過程は,必ずしも階層構造に従った経路をたどるとは限らない。それは,一見何の関係もない事象を直観し,それがきっかけとなって思考が発展し,解決への道が開かれることもあるからである。
 学習においても,既習事項の,ある既得概念が気になり,階層構造の学習の流れからすると,横道にそれた考えが必要になってくることがある。この場合,思考の過程は階層構造でなく,非階層構造的である(図−1)。

図1 非階層構造
 これは,学習者が,課題を解決するために,様々な資料を本棚から見つけだし,情報と惰報を結び付けて思考する様子に似ている。つまり,課題解決に必要な情報が含まれているある資料(ノード=カードの意味)の中の情報Aと,異なるノードに含まれる情報Cとを関連(リンク)させて思考し,課題を解決するということである。
 そこで,課題解決のために,さまざまな情報や事象が相互に関連し合い,非階層構造的にも学習できる,中学校理科「地球と人間」の単元において,地球環境にかかわる教材を開発することにした。
 その実際にあたっては,教師が今までに作成した資料や新聞のスクラップ,学校や図書館等に蓄えられている文学資料や写真資料,図表や映像資料等を有効に活用し,文字,図表,写真,音声,動画などのもつ様々な情報を,同一のメディア(コンピュータ)で統合したマル手メディア教材を開発しようと考えた。
 このことは,「新教育メディア開発研究総合事業」(平成4年:文部省)の報告書の中で重要な位置付けをされている「教育・学習方法の改善・充実」「学習に関する惰報の提供」「視聴覚教育の現代化・一般化」等の新しい教育メディア活用の意義をマルチメディア教材の開発を通して明らかにすることにもなる。


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