福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -010/038page

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自らそれをふくらませていくような態度や能力の育成へと,その力点を移していかなければならないであろう。
 加えて,鑑賞指導が,広くものごとを「見ること」の指導,さらには「生涯学習」や「異文化間コミュニケーション」,「環境に関する指導」などとも通じるものであるという視点を常に念頭においた指導が求められることになるだろう。

3.様々な取リ組みに学ぶ

 このように考えるとき,これからの鑑賞指導の在り方に貴重な示唆を与えてくれるものとして,これまでの先進的な取り組みや美術館等の様々な活動から改めて学ぶべきことは多い。

(1)体験的・活動的な鑑賞指導の工夫と実践から
 東京都図画工作研究会の10年来の実践(註1)は,大人とは異なる子どもの美意識の再発見をもとに鑑賞教育を新しい視点から組み立てなおす試みとして,いま改めて評価・検討されるべきものを含んでいると思われる。
 それは,子ども特有の美意識をその奔放な想像性と体性感覚的な感性(<ひょう依性> と<身体性> )ととらえ,それに添うかたちの学習パターンを提起していることである。前鑑賞的活動として遊びの要素を大胆に取り入れた「行動的鑑賞学習」や,作晶を栃吾化・劇化する「想像的鑑賞学習」,「制作を通した鑑賞学習」などの発想と実践は,これまでの指導における教材観や指導観などの重要な視点の再構築を求めるものとして,小学校はもちろん中・高等学校にとってもまことに刺激的な取り組みであると言えよう。
 また,同研究会とセゾン美術館などの協力によって開発された「アート・ツール」(註2)は,前鑑賞的な活動のための玩具的教材である。「もの」を通じて現代の多様な表現と子どもたちを切り結ぶ方策を示しており,美術館の教育普及活動との連携という点からも注目に値する試みである。

(2)美術館・博物館における教育普及活動から
 地方美術館の建設ブームが一段落したここ数年,新たにそのソフト面の充実を期待する機運が高まるなかで,多くの美術館・博物館において教育普及活動の充実を目指したユニークな取り組みがなされるようになってきた。
 先に挙げた「アート・ツール」も,セゾン美術館によって「グッゲンハイム美術館名晶展」にあわせて企画された鑑賞講座「あそびじゅっ・・・・・子どものためのモダン.アート・・・・・」(註3)の一環として実現したものであるが,そのような様々な教育普及活動のなかでも,北海道立近代美術館や静岡県立美術館,目黒区美術館など多くの美術館等において研究・製作されている「セルフ・ガイド」は,学校における授業実践に直接生かせることができるものとして注目される。(註4)


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