福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -011/038page

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これは,主に子どもを対象とした作晶鑑賞のためのパンフレットであるが,その発想は,従来の作晶や作者についての情報を一方的に提供するようなものとは大きく異なっている。図版やイラスト,文字など様々な視覚的な効果を生かして子どもの冒険心や想像力を楽しく刺激しながら,自分なりの思考や想像あるいはスケッチなどの行為を誘いかける様々な「問いかけ」や「仕掛け」が工夫された,魅力的なツールである。その「見るヒント・感じるヒントをそっとささやく」という発想や,専門的な研究に裏付けられた具体的な方法などは,児童生徒の主体的な鑑賞を促す指導過程や教材を工夫する上での視点やノウハウを数多く提供してくれる。

4.おわりに

 今後,これらの優れた取り組みの成果を生かしながら,「新しい学力観」に基づいた題材の開発を進めるとともに,コンピュータを活用した鑑賞の授業の在り方や美術館等の教育普及活動と連携した教材やプログラムの開発について,具体的な研究を進めていきたい。

<註>
1.「子どもの美の領土へ」(東京都図画工作研究会編著日本文教出版株式会社)およぴ「アートスクランブルー・・・子どもたちからの発信・・・」(東京都図画工作研究会編著文化書房博文社)参照
2.「DOME」]号(日本文教出版株式会社)P.6〜P.15参照、
3.同上
4.「DOME」2号(臼本文教出版株式会社)P.1〜P.17参照

<資料 1>
「造形表現の鑑賞に関する生徒対象意識調査」(平成4年度個人研究)より

肯定的な回答が70%を超えた質問項目
 美術の授業には,個性を認める「自由さ」があったほうがいいと思う。
 美術の授業では,主に美術の楽しさを教えてほしいと思う。
 授業で,友人など自分以外の人の感性や能力に触れることは,おもしろいことだと思う。
 美術の鑑賞では,自分なりの感じ方や考え方をもって作晶を見ることが大切だと思う。
 「美術」は,自分にとって主に精神的な豊かさをもたらすものだと思う。
 美術の授業は,美術の能力や感性を育てるためにあるのだと思う。
 授業では,結果としての作品よりも,自分なりの充実度のほうが大切だと思う。
 絵画や彫刻,デザインや工芸などの作品を見るのはおもしろいことだと思う。
 美術作品を見ることは,自分のものの見方や考え方を豊かにするために必要なことだと思う。
 美術作品を見ることは,つくることとは違った意昧を持っていると思う。
 美術作品を鑑賞するには,自分で感じたり考えたりする力が必要だと思う。

否定的な回答が25%を超えた質問項目
 ふだんから出来るだけ多くの美術の作品を見たり,造ったりするように心掛けている。
 美術の授業では,主に知識や技術を教えてほしいと思う。
 美術の鑑賞の授業では,自分の感性や個性がよく発揮できると思う。
 美術作品を鑑賞するには,豊富な知識が必要だと思う。
 作品を見るときは,作者の表現意図を考えながら見ることが多い。

否定的な回答が40%を超えた質問項目
 美術作品を鑑賞するには,表現の技術を身につけている必要があると思う。
 美術作品を鑑賞するには,特別な才能が必要だと思う。
 美術の鑑賞には,正しい作品の見方というものがあると思う。
 作品を見るときは,技術的な優劣で見ることが多い。

※調査は,5段階の評定尺度法により行った。

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