福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -012/038page
所員個人研究
科学の方法を学ぶ物理実験ノートの作成 −ガリレオの「新科学対話」を素材として− 科学技術教育部 阪 路 裕
1.はじめに
ガリレオの著者である「新科学対話」の中には,高校の物理ではじめに学ぶ落下運動や放物運動について,真理を探究していった過程が3人の対話の形でやさしく書かれている。そこにみられるガリレオの考え方や研究の進め方はこれから物理を学ぼうとする生徒に,物理的なものの見方や考え方,物理的な探究の方法を教えるのによい手本になる。
そこで「新科学対話」から,ガリレオが自分の考えを述べている文章や図を引用したり・ガリレオが行った実験を再現したりし,さらに効果的な観察,実験,作業,演習問題などを加え,これらをまとめて,落下運動が体系的に学習でき,かつ科学の方法とはどのようなことか学習できるような実験ノート「自然の探究」を作成した。2.「新科学対話」について
(1)高校物理に関係する内容
( * 印は実験ノートに取り上げた内容 )
・光の速さの測定
・重さと落下遠度 *
・振り子の等時性 *
・終端遠度
・糸の長さと振り子の周期*
・固有振動数
・共鳴
・弦の振動 ・等遠直線運動 *
・自然加速運動(等加速度直線運動) *
・等加速度直線運動で進む距離 *
・距離が時間の2乗に比例することの証明 *
・斜面の実験 *
・放射体の運動 *
・放物線を描くことの証明 *
・落体が受ける空気の抵抗力 *
・速度の合成 *
・仰角45度の投射 *
・仰角と到達距離の表 *
○ガリレオはこれらのほとんどについて,実験または数学的考察を試みている。
(2)「新科学対話」にみられる科学の方法
思考実験 観察 仮説の設定
運動の図による表現 推論
数学的考察・証明 条件の制御
測定 実験 データの分析
数理的処理 規則性の発見
検証 論証 科学的なものの見方・考え方など