福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -023/038page
[事例 4] 6年 小数のわり算(個別指導)
(教具使用のねらい)
乗法九九の習得が不十分で,除法の計算技能が低い子供に,楽しく遊びながら乗法九九を習熟させ,除法の計算技能を高めさせること。
事前調査を行い,N子を抽出児とし,休み時間や放課後の短い時間(5分以内)で教具を利用させた。N子が希望しないときは,練習を中止した。
はじめN子は,式を見て当てはまる積を探す方法でプレートを置いていったが,練習回数が増えるにしたがって,積を見て当てはまる式を探す方法へと移っていった。 指導に当たっては,積の数が大きくなると被乗数や乗数を見つけ出すまでに時間がかかる傾向が見られたので,積の大きさを限定して練習を繰り返し,その範囲の乗法九九の習熟度を高めるようにした。
その結果,36個のプレートを全部はめ込むまでの時間は,下のグラフのとおりで,練習回数が増えるにしたがって短縮していく傾向が見られた。
また,N子が3か月間(延べ25回)この教具で遊んだ後の事後調査の結果は,次のようであった。
N子の誤答数の変化
誤答数 設問の内容 設問数 事前 事後 ・乗法九九(3×6,4×8など) 243
15
4
・わり算(乗法九九の逆算)(18÷3,32÷4など) 243
38
6
このことは,乗法九九が習熟してくるとわり算の技能も向上してくることを示している。
さらに,事後の誤答数がほぼ同数なのに比べ事前の誤答数に大きな差が見られることから,わり算(乗法九九の逆算)の技能を向上させるには,乗法九九を唱え,覚えるだけではなく,積と式を同値関係としてとらえられるような指導が効果的であると考えられる。4.おわりに
乗法九九を習熟させ,除法の技能を高めるために,式と積をパズル式に一致させる教具を使用させてみた。
この教具で遊ぶ子供たちからは,「おもしろい」「もっとやりたい」「大きい数だとむずかしい」という感想が共通に聞かれた。
積から被乗数または乗数の一方を見つけて,他方を見つけ出す技能を習熟させる効果があった。
中には,数字と数字の機械的な操作に終始した子供が見られた。今後は,乗法九九の技能を除法の考えとして一層活用できる力とするために,除法の具体的な場面の中で,子供たちの興味・関心を高めながら乗法九九を活用していく力を伸ばす指導の在り方に力を入れていきたい。
<主な参考文献>
○小学校指導書 算数編 文部省
○初等教育資料 No590, 595 東洋館出版
○内外教育 第4393号 時事通信社