福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -027/038page
○家庭訪問をし,A男の最近の努力について具体的な場面を取り上げてほめる。また, 家庭でもA男のよいところを認め,ほめる ようにする。 ○両親の前でほめられうれしそうな表情が見られた。(担任が帰った後両親からほめられたことを翌日笑顔で報告した。) ○同分母分数のたし算の理解が,思うようにできないので,放課後,簡単な整数のたし算をさせ, できた実感をもたせる。 ○A男が,授業の中で積極的に挙手をするようになってきたので, 級友の前でほめる。 ○級友もA男のよさを認め,「A男君,頑張ってたね。」と言葉をかける。 ○担任や級友から認められ,にこにことうれしそうな笑顔が見られる。 5.まとめ
多動傾向(LD)のため担任や級友から認められることが少なく,疎外感,孤独感を感じて集団に適応することができなかったA男であったが,担任が教育センターと連携を図り,受容的な指導援助を行い,本人のよいところを認め,ほめたことにより,A男の自信が高まり,集団もA男を受け入れるようになった。また,家庭訪問をしてA男を認め励ます機会を設けることを話し合い,家庭との遵携も図ることができた。
多動傾向(LD)が原因となって集団不適応になった児童への指導援助の留意点
○LD児に対する援助の在り方について,担任が十分に理解する必要がある。
○LD児が集中しやすいように,座席の位置や周囲の友人に配慮する。
○行動面の特性を他の子と比較せず,よい点をみつけて認め,ほめる機会を増やすようにする。
○実態を的確に把握し,児童に到達可能な目標を持たせ,できた時にシールなどを与えて十分に認め,成就感を味わわせる。
○援助の初期の段階では,意欲を喚起し持続させるため,失敗はできるだけさせないようにする。
○ルールの分かりやすい簡単な遊びなどを取り入れ,LD児も集団活動に参加できるようにする。
○専門機関,家庭との連携を図り,共通理解のもとに,段階的に援助していく。