福島県教育センター所報ふくしま No.108(H05/1993.8) -002/038page
特別寄稿 (論説)
現代社会の変化と教育の課題 文教大学教育学部教授 平 沢 茂
1.現代目本社会の変質と教育の対応
今日,我が国の社会は,かってない急激な変化に見舞われている。ところが,教育制度は,元のままだから,あちこちに時代の変化に合わない部分が生じ,ほころびが目立ちはじめた。
ではいったい,日本の社会の変化とは何か。次の五つが大きな要因である。つまり,
1. 情報化
2. 国際化
3. 高齢化
4. 地域共同体の消滅
5. 家族形態の変化と家庭教育の変化
である。それぞれについて,詳細な考察が必要であろうが,紙数の関係もあり,かいつまんで考察していこう。(1) 情報化と教育の対応
情報化杜会では杜会の変化が加速度的に進行する。このことは,過去数年間に起きた世界の変化,とりわけ旧ソ連や東欧諸国の変動を見ればよく分かる。
こういう社会に生きる人間は,あらゆる事柄や流布される情報を,自分の目で見,自分の頭で考え,自分なりの判断をし,その判断を他の人々の判断とつきあわせてより正しい選択をすることが必要となる。変化の速い社会では,次々に生じる新しい事態をこうして判断し,正しい選択に基づいて行動し続けることが求められるのである。
日本の学校教育は,教科書や教師の与える知識や惰報をうのみにし,まる覚え・まる暗記することが学習だと言っているかのようである。しかし,こういう学習は時代の要求に合わない。合わないどころか,時代が要求する学習はそれとは正反対のものだ。「覚える」ことではなく「究める」ことを要求しているのだと言ってよい。まさに,時代は「新しい学力」を求めているのである。
教師も保護者も,このことを十分に理解し,これからの教育の方向について,その選択を誤らないようにしたい。何しろ,惰報化杜会における変化は,加速度的に進行する。選択を誤れば,壊滅的な結末があっと言う間にやってくる可能性すらあるということだ。(2) 国際化と教育の対応
情報化杜会の進展,交通機関の発達で世界はますます狭くなっている。日本が島国だなどと言っていたのはもはや昔語りになった。
国際化への対応という視点で言えば,教育には,次のようなことが求められている。