福島県教育センター所報ふくしま No.108(H05/1993.8) -004/038page

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ような問題を現出している。
 1. 過保護
 2. しつけの喪失,とりわけ,社会性涵養におけるしっけの喪失
 3. 早期からの,そして過度の受験競争への駆り立て

さて,こうした問題をはらむ家族形態の変容に対する教育の課題とは何であろうか。
 1. 家庭教育の再生 ・・・・・ 子どもの教育に対する保護者の意識改革は不可欠である。学校教育の問題の根の一つが家庭にあると書いた。四角四面の校則・生徒指導も実は,家庭教育でこそ行われるべきしつけを学校が代行しようとすることに由来するという側面が確かにある。基本的生活習慣,社会生活におけるルール等まずは保護者が家庭で教えなければならない課題である。

 2. 受験重視教育から「新しい学力」のための教育へ ・・・・・ 基本的な生活習慣や社会性の育成がおろそかにされている一方で,過度の受験勉強を強要するのが現在の家庭教育である。

 しかし,情報化の箇所で見たように,時代は新しい学力を要請している。受験重視教育からの転換を真剣に検討しなければならない時代になっている。折しも大学の入試方法にも様々な変化が生まれつつある。高校入試にも変化の兆しが見られる。このような学力観の転換を保護者自身が理解することはとても重要なことだ。


2.21世紀に望まれれ人間像

 21世紀の足音が聞こえ,日本のみならず,世界は激動している。上述したような「変化に対応する教育の在り方」に少しだけ光を当ててきた。学校教育の制度そのものの問題,教員の採用や勤務条件,人々の生涯学習支援の在り方など,考察すべき課題はまだまだある。しかし,残念ながら,紙数が尽きた。
 まとめに代えて,これからの社会で求められる人間像を記しておきたいと思う。

 1. 常に学び続ける意欲を持ち,
 2. 学ぶ方法を身につけ,
 3. 自分の目で見,
 4. 自分の頭で考え,
 5. 自分の意見を自分の言葉で述べ,
 6. 他人の意見に注意深く耳を傾け,
 7. 自他の意見を比較しつつ,より正しい選択肢を求め続け,
 8. 同時に,自分以外の人間の心情や文化に対する理解や思いやりの心を持つ,
人間,である。

 こうした人間を育てる教育のシステムをつくるためには,保護者,教師,教育行政関係者が知恵を絞り,協力し合うことが不可欠である。
 21世紀に生きる子どもたちのために何をすべきかを検討し,できるところから改善に着手しなければならないときが来たようである。


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