福島県教育センター所報ふくしま No.108(H05/1993.8) -005/038page
所員個人研究
不定愁訴を持つ高校生に対する指導援助の在り方 −養護教諭のかかわりを通して− 教育相談部 高野 成一
I 主題設定の理由
学校教育相談を進めるうえで,養護教諭は欠くことのできない重要な役割を担っている。一般に,身体症状の背景には心理的要因が絡んでいることが少なくなく,身体的な問題と精神的な問題とを明確に分けることは困難であると言われている。
そこで本研究においては,心身両面で不安定になりやすい肩校生を研究対象に,背景に心理的要因があると思われる身体症状を訴える生徒に養護教諭は心理面でとのようにかかわったらよいか,その指導援助の方向性を探ることとする。この研究は,学校生活不適応を起こす可能性のある生徒に対する予防的な指導援助の手がかりになるものと考えている。II 研究仮説
悩みや不安など心理的要因を抱える子どもは,さまざまな身体症状を訴えやすい。そこで,このような「不定愁訴」[注]を持つ生徒に対し,自我の成長を促すような心理面での指導援助をすることで,身体症状も軽減させることができると考えた。
[注] 「不定愁訴」とは
頭痛,めまい,倦怠,易疲労,便秘,下痢,食欲不振,悪心などの,どこがどう悪いのかはっきりわからない器質的所見の見出し難い全身にわたる自覚症状です。
III 研究方法
1.研究対象
福島県立K高等学校(中規模の全日制男女共学の普通高校)全校生713名2.研究方法
(1)不定愁訴に関するアンケート
不定愁訴がある場合「自律神経失調症」と診断されることが多いので,そのひとつである「起立性調節障害」の診断項目を中心に総合的に実態を把握する内容とする。
(2)個別心理検査
不定愁訴を持つ生徒の数名に対し,次の二つの心理検査を実施する。
1. PFスタディ(絵画欲求不満検査)
日常生活での欲求不満場面を示す漫画風の絵に対する反応の特徴から,常識的適応を示す人か否か,杜会性や情緒性の発達の程度はどうか,攻撃性の方向やタイプはどうかなどで,人格を診断しようとするもめである。ここでは青年用を使用している。 今回は,変容を把握するため指導援助の前後に2度実施した。
2. SCT(文章完成法テスト)
「子供の頃,私は・・・・・」というような未完成な文章を提示しそれをひとつの文章に完成させる形式をとる心理検査である。