福島県教育センター所報ふくしま No.108(H05/1993.8) -009/038page
所員個人研究
個を生かす導入問題の工夫 学習指導部 鈴木 昭
1. はじめに
学習指導要領の総則にはこれからの学校教育の在り方が端的に示されています。
○ 自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成
○ 基礎的・基本的な内容の指導の徹底
○ 個性を生かす教育の充実
これらの教育的課題にせまるためには,問題解決の授業においては課題設定が1つのポイントです。いつも問題が与えられるのを待つのではなく,児童自らが「問い」を持ち,追求するような授業をめざしたいものです。そこで,個を生かす導入問題について考えをまとめてみました。2. 研究の内容
児童一人一人は様々な「違い」を持っています。それらは「個人差」等と呼ばれます。この個人差のあらわれを「個の表出」ととらえ,それを授業の展開に生かすことを「個を生かす」ことととらえました。導入問題によって引き出された「個の表出」を単元の学習指導計画の作成にどう生かしていくかということが研究の内容です。
3. 研究の構想
まず教師は,教材研究により基礎・基本を明らかにします。次に,それらの基礎・基本が児童にどう定着しているか,児童の実態を前提テストなどによってとらえます。そして,それらの実態をふまえた上で単元の指導計画を作成し,導入問題を工夫します。
単元の導入の時間に,児童は導入問題と出会い,様々な考えや疑問などを持ちます。教師はそういった児童の内面にあるものの表出を大切にし,単元の指導計画に取り入れて,単元の学習指導計画へと発展させていきます。
このことは,児童に単元の学習の見通しを持たせることでもあります。4. 実践授業のねらい
実践授業のねらいは,「単元の導入時において,学習意欲を高めながら,個の表出を学習指導計画の作成に生かす」ということです。単元は小学校5学年「四角形と三角形の面積」で行いました。
まず,「基礎・基本をどうとらえたか」ということですが,「平行四辺形の面積の求め方」にっいて,児童は「長方形の面積の求め方」か「複合図形の面積の求め方」での学習を基礎として問題を解決すると考えました。基本的な考えは図1のように5通り(考えA〜考えE)を予想しました。