福島県教育センター所報ふくしま No.109(H05/1993.11) -005/038page

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所員個人研究

「裁判」形式によるディベート授業

−高等学校社会「現代社会」での実践から−

学 習 指 導 部 赤 塚 公 生
福島南高等学校 阿 部 正 春



1 はじめに

現在,ディベート学習が静かな注目を集めている。古来,日本では「以心伝心」といったコミュニケーションが尊重され,論理的に議論をしていくことは,とかく敬遠されがちであった。しかし,国際化への対応が迫られている今,自らの意志を的確に表現し,コミュニケーションを図ろうとする能力の育成は不可欠のものになっている。

また,来年度から高等学校でも新学習指導要領が実施されるが,指導要録の評価の観点「資料活用の技能」に,新たに「表現」が付け加えられたことも,このような時代の要請を受けたものと考えられるのである。

2 「裁判」形式のディベート

ディベートの定義は,「二組のチームが,特定の問題について,是と非の相反する立場に立って,根拠に基づく論争で技を競う,形式の定められた試合」(Webster's New World Dictionary.1957)とすることができる。ディスカッションと大きく異なるのは,テーマに対する賛否の立場を個人の意見や信念とは別に決め,討論の技術そのものを高めようとするものであることである。従って,ディベートは本来ゲーム的な要素を持つものであるが,生徒の発達段階によっては,自らの意見と異なった立場で議論することに大きな抵抗があることも予想される。

今回実施した,「裁判」形式によるディベート学習は,ディベート授業をより豊かにするために,裁判の手法をディベートに当てはめて行った,実験的な新しい試みである。

まず,ディベートのテーマが被告席に座り(実際には,「PKO」などと記したカードが置かれる),検事側はその有罪を様々な根拠に基づいて,立証しようとする。それに対し,弁護側は無罪であることを,別な観点や考え方に基づいて立証する。両者の反対尋問の後,証人喚問を行い,証人席の教科担任に向かってそれぞれの立場から有利な立論やデータを引き出そうとする(証人は,どちらの側に対しても教科担任が行う)。

進行表
開廷
冒頭陳述(検事側→弁護側)
反対尋問( 同上 )
証人喚問( 同上 )
最終陳述( 同上 )
−休憩−
陪審による票決
判決
閉廷

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