福島県教育センター所報ふくしま No.109(H05/1993.11) -007/038page
(3) 授業の実際
実践例の一つとして,9月18日(土)に,1年3組で実施した授業を紹介する。
写真のように,中央に裁判官と書記官,左手に検事団,右手に弁護団がならぶ。中央の椅子の上には,本時のディベートのテーマである「PKO」が被告として座っている。
(授業の様子。証人喚問の場面)
まず,裁判長が開廷を宣言し,さっそく検事側が冒頭陳述において,「PKO]における自衛隊の参加が「有罪」であることを,次の3点から立論した。1.憲法が軍事的解決を否定していること2.犠牲者がでるなどの危険性が高いこと3.自衛隊のPKO参加がアジア民衆に危惧の念を与えることの3点である。
これに対して,弁護側は1.憲法に違反していない2.今回のPKOは,選挙監視,災害復旧を目的としている3.日本だけが人的支援を惜しむのは国際的信用を失う,と冒頭陳述で応酬し,それぞれ基本的な立場を明らかにした。
反対尋問では,双方5分ずつ時間が与えられ,お互いに相手が論理的な破綻をきたしていないか,質問しあった。検事側は「PKO]以前の平和的援助の必要性を訴えた。また,ボスニア・ヘルツェゴビナ問題を例に,自衛隊の海外活動については,国内のコンセンサスが不十分であると弁護側を論難した。
一方弁護側は,検事側の立論の「PKO」活動への理解不足を指摘し,国際世論と日本の責任の観点から反論し,「PKO]の必要性を力説した。
この後,「証人喚問」になり,それぞれの側が自分たちの立場を補強するために選んだ質問に対し,教科担任は専門的知識を駆使して公平に証言した。検事側は,世界の武器輸出の状況を質問し,弁護側は、国連における平和維持活動を質問した。
最終陳述では,これまでの議論の経過を踏まえて,双方ともに論点を確認した。
さて,ディベーター以外の生徒たちは,5〜6名ずつ陪審グループを作り,陪審員席で裁判の模様を傍聴した。この間,「評価カード」に裁判の進行に合わせて,評価とメモを記入した。そして,最終陳述終了後ただちに討議に入り,グループとしての票決を行った。
票決は,二つに分けて行い,まず,有罪か否かについては,3−2で無罪,つまり,「PKO]への自衛隊の参加は正しいとされた。また,検事側,弁護側の説得力の評価については,5−0で弁護側の勝利となった。