福島県教育センター所報ふくしま No.109(H05/1993.11) -014/038page
(3)帰化植物による環境の評価
人間の手が常に加わり,環境が不安定になっている所では,在来種の勢力が弱まり,帰化植物が多くを占めるようになる。舗装による土壌の乾燥とァルカリ化,水の汚れなどによる富栄養化などは特に帰化植物の生育にとって有利な条件をつくりだしている。
そこで帰化率を調べれば,そこの土地がどれだけ自然状態から離れているか知ることができる。摺上川(瀬上橋付近)地点でl0m×10mのカデラ−トをとり,調査した。(H5,9,5)
No. 種名 帰化種 No. 種名 帰化種 1 メドハギ 16 オオアレチグノサ ○ 2 セイヨウタンポポ ○ 17 ハキダメギク ○ 3 アレチマツヨイグサ ○ 18 セイタカアワダチソウ ○ 4 ミゾソバ 19 オオブタクサ ○ 5 カナムグラ 20 ウスベニツメクサ ○ 6 ヨモギ 21 アメルカセンダングサ ○ 7 ヘラオオバコ ○ 22 ムシトリナデシコ ○ 8 ヒメムカシヨモギ ○ 23 クズ 9 シロツメグサ ○ 24 キクイモ ○ 10 アレチウリ ○ 25 オオアワダチソウ 11 イタドリ 26 オナモミ 12 イノコズチ 27 カワラハハコ 13 ママコノシリヌグイ 28 ヒメジョオン ○ 14 ヨシ 29 カワラケツメイ 15 オオケダテ ○ 30 ヤハズソウ 表2 河川敷で確認された植物一覧
(帰化率=約50%)
4.考察
今回は,児童が徒歩で調査できる範囲にある、見た目での汚れ具合が異なる幾つかの川を対象に調査を行った。
上流にきれいな清流をもつ摺上川は,途中の小川との合流地点で水質が悪くなるもののCODやリン酸イオンの値は小さく生物相も清流にすむカワゲラ,トビケラ,カゲロウなどの種類が多く採取された。
この場所と比較して,B地点では水生生物相が大きく異なり,ヒルやミズムシを中心に富栄養化(汚れ)に適応できる種類の生息が確認できた。この蛭川は,住宅の雑排水を集めて阿武隈川にそそいでいる。
D地点は,家庭の雑排水を集めて,摺上川に流れ込む場所なので,COD,リン酸イオンの値が高く,水生生物も富栄養を好む種類が多い。
E地点は,いわゆる「どぶ」でCOD,リン酸イオンの値が非常に高く,大変汚れていることがわかる。生息している水生生物もセスジュスリカのみで,家庭雑排水の影響を実感できる。
以上のように,身近に流れているいろいろな状況の川を生物学的,理化学的に調査することにより,汚れの原因を考えさせ,環境を守ることの大切さを実感させることができる。
帰化植物の調査では,いろいろな地点での帰化率を調べ,帰化植物の分布を学区地図に書き込めば,汚れている場所又ほ都市化の進行が分かり,自然度の判定にもなる。
身近な自然環境のひとつである「川」に目を向け,科学的に調べていく体験的な活動を行えば,その過程で自然を守っていこうとする態度が養われていくと考える。