福島県教育センター所報ふくしま No.109(H05/1993.11) -029/038page
たんだよ。それは,きつく言ったこともあったけど先生の言われた通りにしたし,お母さんやお父さんにほめられるように努力してきたのに。」と苦痛に満ちた表情で話す姿を見て母親は絶句してしまった。母親には,A子のつらい気持ちを支え,励ましてあげるようお願いして家席訪間を終えた。
(3)[学校での対応]
学級担任は,家庭訪問の結果を校長・教頭と生徒指導主事・学年主任に報告した。即刻,対策会議を開き対応を協議し,次のような取り組みが話し合われ,指導援助が行われた。
1. A子のつらい気持ちを受け止め,共感的に接することを第一とする。
2. いじめの事実開係を確認する。
3. B子グループに個別指導をする。
4. 双方の保議者への説明と今後の対応について話し合うための家庭訪問をする。
5. 教師が,休み時間などにできるだけ生徒の中に入ったり,授業中の態度を細かく観察したりするなど,生徒達の交友関係に関する実態を十分把握する。
6. いじめの有無に関係なく,温かい人間関係を育てるという視点で全校の学級経営の見直しを図る。
7. A子が人間的な成長を遂げられるように学校と家庭が連携して援助する。4.A子の変容
学級担任の教育相談で受容・支持されたA子は,心の安定感を取り戻していった。
さらに,なぜ学級の中で孤立してしまうのか,自分自身を振り返るゆとりも生まれてきた。
また,学級担任は,B子グルーブへの教育相談も並行して行った。その中で級友の心の痛みや思いやりの大切さに気づかせるとともに,グループ一人一人の悩みや不満の解消に努めた。その結果B子グループも徐々に攻撃的な言動がなくなってきた。
A子は,級友に自分の意見を押しつけるようなこともなくなり,学級でも話し相手が増え学習活動も活発になった。
家庭では,父母が期待過剰の面を反省して,できるだけ会話を多くしようと努力した結果,A子に明るい笑顔が戻ってきた。
[いじめに対する対応の留意点]
1. いじめが起こっていることを児童生徒から話してもらえるような信頼関係を普段からつくっておくこと。 2. いじめをする者に対してだけでなく,クラス全体を対象として,心の痛みの理解・弱さへの思いやりの気づきなどの教育的対応をすること。 3. いじめは解決までに時間がかかることが多いので,その間いじめられている児童生徒の話を聞いてやり支えてやる。 4. いじめを受けている児童生徒が,気づかない周囲との考え方のずれがあれば,教育相談などにより気づかせたり,望ましい人間関係の醸成に努めさせたりする。