福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -017/038page

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学力向上への課題と救育センターの取り組み


学 校 経 営 部


「学力向上を図る」との県の教育課題に対し県内各学校は,その校種・地域性に応じ様々な取り組みを始めている。

今回,福島大学教授庄司先生の巻頭論説により県下の学力向上にっいて問題提起をしていただくとともに,県内の小・中・高校の学力向上に向けての実践を通した具体的な提言をしていただいた。

こうした問題提起や提言,関係機関による「学力が伸びない要因は何か」の分析追求により,学力向上に向けていくつかの課題が浮かぴ上がっている。

その1.大学入試のセンタ‐試験の成績が振るわない,特に数学・英語の学力が十分でないことが全体の成績の不振につながっていることから,「基礎・基本の定着が十分図られていない」との指摘がある。

このことに関しては別の視点から調査分析し,「共通に習得すべき基礎・基本に関する指導は十分におこなわれているが,能力のある者に対して発展的な力をつけるてだてが十分でない」との見方もある。これは庄司先生も「本県の場合,学年が進むにつれて成績上位の生徒が伸ぴ悩む傾向がある」とし,このことを解明すべき課題として取り上げている。

その2.「学力を向上させるには基礎・基本の徹底こそ重要」との立場から,新学習指導要領による「新しい学力観」を基にした「授業」の在り方にっいて疑問を投げかけ,「果たして学力がつくのだろうか」との不安の声もある。これは多分に「基礎・基本=知繊・技能」ととらえ,その徹底を図れば学力は向上するとの考えが基になっていると思われる。が,今回の「新しい学力観」を基にした「授業の在り方」は,「教科に置ける基礎・基本は,すべての児童生徒が等しく身につけるベき学力」であり,それが確かな学力になっていくには,内発的学習意欲に支えられていなければならないという立場に立つ。つまり,「子どもの認知過程にともなう情意面(関心・意欲・態度)の現れも学力のひとつとして大切にしていかなければ,本当の学力は身につかない」(注1)という「新しい学力観」の意義が十分理解されていないことによるものと思われる。この面の理解を図ることが,「学力向上」への課題ともなる。

その3.庄司先生が指摘されているように,学力が向上するかどうかは「授業の質」にかかっている。国立教育研究所の研究(注2)によれば,「(算数・数学の授業で)小・中・高校と学年が進むにつれて授業の進め方が教師の説明中心になり,操作的な活動や話し合い活動が滅っていく」ために,教科学習に対する興味・関心が薄れ,


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