福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -019/038page

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随 想

活力は信頼する心の通い合いから


教 育 研 究 係 長 近 野 元 洋



教育の仕事に携わる我々教師が常に心しておくべきことは,何にもまして豊かな人間性を持つということであろう。そんなことはあたりまえのことだが,私は実践力が乏しい質なので心に響く人の生き方を見聞し,精進する基にしたいと思っているのである。

その1 初任校で学んだこと

私が初任校で初めて生徒達を送り出した時のことである。卒業式で別れの雰囲気を演出したいと思い,バックミュージック用レコードを買って式に備えた。その時の教頭先生が「近野君,レコード代は今すぐ払えないがそのうち教材費か何かでやりくりするから,それまで立替えていてくれ。」と言われた。この時「ハッ!!」と思った。既に式の運営について共通理解を図って準備を進めているのにレコードを買うなどは勝手すぎることなのだ,と。しかし私の生徒たちへの思い入れを受容してくださった当教頭先生の広い心遺いに頭が下った。以後その豊かな人間性を模範としている。

その2 職責遂行の在り方を学ぶ

三つ目の学校,F市のD中学校で教育委員会恒例の指導訪問があった時のことである。指導主事の方々が一日我々の指導の実際を参観され,最後に全体的な指導助言があった。そのきぴしい講評は日頃我々の至らないことへの助言であると聞き内省したが,内心講評者への不満があった。と,時の我が校長先生は「本校の実態を一番よく把握し,生徒たちの心を受容して指導しているのは先生方である。自信を持って日々の指導に当たってほしい。」旨述べられ,我々職員を激励された。当校長先生はいつも大きな心で学校を経営されていたので,我々は信頼して指導に専念することができた。この中学校で私は,人間関係に気を配りながら自分の立場や役目を賞任を持って遂行するその在り方を教わった。

その3 信頼感のある学校は輝く

F市M中学校でのことである。小規模校だが,生徒たちの活躍が学校行事,部活動進路選択等学校教育の多くの場面に発揮され,好ましい校風に満ちた中学校である。その源は先生方の教育への熱意である。若い先生が多いから日々の教育活動にはうまくいかないこともあるが,何よりも実践力があり,お互いに協力し合って進めていく雰囲気ができていた。このような職場の中では一人の力が2倍にも3倍にもなって発揮されるのである。一人一人の力は小さいが,その人の努力を見い出し激励すればすばらしい力となり,学校は活性化することを教わった所である。


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