福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -021/038page
金銭を持ち出し,友人におごる児童の例 1 はじめに
この事例は,繰り返し母親の財布から金銭を持ち出し,友人におごっていた小学校5年生男子A男に対して,学級担任が情緒の安定を図りながら,内面に目を向けた指導援助をしたことにより,問題行動が改善されていったケースです。
2 問題の概要○ 9月中旬,A男の同級生から担任に,「A男が学校に1万円札を持ってきている」という話があった。
○ 担任がA男にそのお金について尋ねた時は,「家に置いてくるのを忘れた」と言い訳をしていたが,母親との連絡を通して別棟に住む祖母の財布から抜き取ったお金であることがわかった。
○ A男はそのお金で,同級生の男子友達数人を誘ってゲームセンターへ行き,ゲーム代やお菓子代をおごっていた。
○ 5月下旬,7月下旬にも,祖母の財布からお金を抜き取り,友達におごったり金銭を与えたりしていたことが明らかになった。
3 A男のプロフィール(1) 家庭状況
<父親> ・仕事熱心 ・教育やしつけには無関心 <母親> ・弟の出生後,育児に追われA男に手を掛けなくなる。
(2) 行動及び性格の状況
・運動が得意
・学習態度にむらがある。
・困難にあうと投げやりな態度をとる。
・ドッジボールなどのゲーム時に,エラーをした友達を殴ったり突き飛ばしたりなど,トラブルが目立つ。
・係活動やグループ活動の場面において,身勝手な行動をとることが多い。
・弟の出生後,反抗的な態度が目立つ。4 診断
A男が3回も金銭を持ち出した原因として,次のようなことが考えられる。
(1) 弟の出生に伴い,母親のA男への接し方に対する不満を解消するため,人から認められたい気持ちが高まっていた。
(2) 悪化している友人関係を金践で補い,