福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -023/038page
[両親のA男への接し方の改善を促す] ○ 母親と話し合う機会をできるだけ多く設け,A男の気持ちに目を向けた接し方に気付いてもらう。 ○ 父親が一緒に遊んでくれるようになったこと,母親が叱ることが減ってきたこと,貯金をはじめたことなどを知らせてくれるようになる。 ○ 日曜日にA男の家を訪問して父親とA男の三人でできるワンベース野球をして遊び,父親がA男と遊ぶきっかけを作ってあげる。 [A男の変化を伝える] ○ 学級日記に書かれていたA男の親切な行為を話題にA男と話をする。 ○「先生に褒められたり,友達と仲良くできることがとてもうれしい」と素直に自分の気持ちを話してくれるようになる。 7 まとめ
これまで述ベてきたように,学佼においてはA男を温かく受け入れることのできる友人関係の育成に努め,家庭においてはA男の内面に向けたかかわり方を促していく指導援助に努めてきました。その結果,A男は学級内で落ち着いて生活するようになり,グループの一員として協力し,積極的に活動するようになりました。
また,「…最近になって,やっぱり家の人のお金でも黙ってとれば盗んだことになると分かった」と,心を開いて話してくれました。
[万引きの初期段階における指導援助の留意点]
○ 小さな盗みであっても見逃さず,早期に,児童生徒の心に目を向けた指導援助をする。 ○ 児童生徒の心情を十分理解し,情緒の安定を図りながら,受容的にしかも厳正さを失わず指導援助をしていく。 ○ 単に万引きの問題行動だけに目を向けるのではなく,友人関係や家族関係など児童生徒のおかれている環境を知り,問題行動の背景・要因を把握するように努める。 ○ 全教職員の共通理解や共通認識の下に協力しながら,児童生徒の指導援助に当たる。 ○ 家庭との連携を密にし,保護者との信頼関係を保ちながら,児童生徒の心に目を向けたかかわりを助言し,問題の解決に当たる。 ○ 普段から児童生徒に対して,物の価値の正しい認識や金銭の正しい使い方などについて,保護者との共通理解の下に,予防的に指導を進めておく。