福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -028/038page
体育科における「個に応じた」指導の在り方
〜体操領域における複線化を取り入れた指導の工夫〜
学 習 指 導 部 渡 辺 裕
1.研究の趣旨近年,子供達の体格はよくなったが体力は落ちているなどと言われ,子供達に体力をつけさせる必要性が叫ばれるようになってきた。
この体力作りに大きく係わる体操は,
○体作り。[よく動ける体(体の柔らかさ),均整のとれた体,よい姿勢]
○動き作り。[巧みな助き,力強い動き,持続的な動き]
○コンデション作り。[体の状態の調整]などの効果をねらいとした領域であり,小学校高学年の学習内容として位置付けられている。
高学年になると,一人一人の体力や運動機能にかなりの個人差が見られるようになる。体操の授業を通して,子供達の体力・運動機能を高めようとするならば,一人ー人の発達段階をふまえ,個に応じた指導を工夫していく必要があると考える。しかしながら,これまでの体操の授業においては,どの子にも同じ体操を行わせ,全員に同じ効果を期待する傾向が少なくなかった。こうしたことは,児童が体操領域の学習にのぞむ場合の意欲や興味・関心の低下につながり,学習の成果にも大きな影響を及ぼしていると考える。
このような体力・運動機能に差のある子供達一人一人が,自分の体力に応じて体操の種目を選ぴ,十分に運動することの楽しさを味わえるような,体操領域における学習指導の在り方を探っていきたい。
2.研究内容
「自分の体力と体操領域の関わり」について,児童がどのように感じているかを調査し,その結果をもとに,児童の希望を生かし,個に応じた体操の指導の在り方を探る。 3.研究構想
1. これまでの体育で学習してきた体操に対する意識,並びに自己の体力と体操の係わりについて,児童の意識を調査する。
2. 筋力(強い力)・持久力(動きを持続する力)・調整力(巧みに動く力)などのそれぞれの体力要素を高めるために,複数の体操教材を意図的に設定し,自分の体力と興味・関心に応じて取り組んでいける複線的な体操学習の在り方を探る。