福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -002/038page

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特 集 ザ ・ 授 業 I

東京学芸大学教授 河野義章

≪巻頭論説≫

細 や か な 授 業 ・ し な や か な 授 業



東 京 学 芸 大 学 教 授 河 野 義 章



1 学習クリニックの子ども達

福島大学に勤め始めた頃,浜田町の古い校舎で学習クリニックを開きました。勉強に意欲のない子やいくら勉強しても成績が伸びない子など,学習に問題を抱えた子どもに放課後来てもらい相談と治療を試みました。

小学校5年生のA君に,
「きょう1時間目はなんの授業」

と尋ねても,はっきり思い出せません。「国語,算数,………ちがう理科かな」というしまつです。

毎回勉強を始めるまえに,その日の時間割りを尋ねました。大学に来ない日には,学習日誌に何の授業があったかを記録させました。半月もすると,自分からすすんで時間割を得意げに話するようになりました。

そこで,今度は,1時間目の理科の時間には何を習ったのか,中味を尋ねましたが,この答えがさっぱり要領をえません。そこで,学習日誌には教科書のページ数やテーマを書いてもらいました。これも,一ケ月もすると自分から中味を報告できるようになりました。

質問をさらにレべルアップしました。

「一時間目の理科で,おもしろかったことはなに」「分らなかったことはなに」

その日習った教科書やノ一トを開き,◎や△の印をつける約束をしました。

「ふしぎだなと思ったことは」「もっと詳しく知りたいと思ったことは」こうして,A君の学習日誌の中味はだんだん濃いものになっていきました。

このクリニックでは,勉強が思うように進まない原因を子どもの知能の低さや努力の足りなさに求めないことにしました。子どもは,勉強しなければならないことや予習復習の大切さを耳にタコができるほど聞かされています。親に叱られるので,できるだけ机に座っていますが,机に座ってなにをしたらよいのか分からないのです。勉強の進め方,英語で study skills と呼ばれるものが,身についていないのです。

中学2年のB君は,家でやるように英語


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