福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -003/038page

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の予習をしてごらんとの注文にたいして book. book. book. book・・・・・・と同じ単語を10個ずつノートいっぱいに書きました。おそらく,小学校のときは杉,杉,杉・・・・とやっていたのでしょう。

ある日,小学校2年生の女の子の父親と話をしました。算数ができなくて困っていました。家でもみてあげましたが,うまくいきません。ところが,熱心な担任が,勉強の遅れがちな子を放課後教えてくれるというので,学校ではどのように教えるのか,参考のために見物に行ったとのことです。

「あれは詐欺だ。素人と同じだ」

との印象をこの父親は抱きました。教師はプリントを配り,間題を解かせ,時間がきたら正答を言って,点数を計算させたのです。100点の子に手を挙げさせました。

学力の向上が急務とされています。大学の進学率で他県に負けないようにとの国体並の競争心の鼓舞の是非はともかくとして,個々の子どもが確かに学んだとの自覚をもてるようになることは,授業の基本です。そこで,本稿では授業について2つの提言をしたいと思います。

2 細やかな授業

これまで授業の質を検討するとき,教師が教材をいかに伝えるかが問題とされてきました。教師がOHPなどを駆使して,熱心に語りかけ,子ども達が元気よく挙手して答える。それで,質の高い授業とは言えないでしょう。教師が語れば子どもは聞いてくれ,子どもが聞いてくれれば情報が伝わるというように単純にはいかないからです。学習クリニックの子ども達の場合も,これまでの授業の視点に立てば,教師が下手だったとは言えないのです。でも,子ども達は教師の期待どおりには学んでいないのです。授業は,子ども達が学ぶことができて,初めて成功したといえるのです。

そこで授業の質を検討するとき,授業の視点を子ども達がいかに学ぶかという学習の過程に合わせることが必要になります。また,子ども達自身にこの学習の過程を知らせて,教師が子どもの学習の伏況を絶えず把握するだけでなく,子どもが自分の学習の状況を自己モニターリングでき,次の学習のステップを見いだせるようになるこが必要になります。このように,個々の子どもの学習の成立にたいして細かな心配りがなされる授業を『細やかな授業』と名づけてみました。

子ども達の学習過程についてはガニェの『授業のための学習心理学』のモデルが参考になりますが,簡単に 1.気づきの段階,2.取り込みの段階,3.習熟の段階,4.実行


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