福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -006/038page

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うに文化の担い手,つまり文化の発信源になりうる学力と言ってもよいでしょう。しかも,この学力は,これまで言われてきたように,基礎的学力を身につけた上に成り立つというものでなく,学び始めた最初から子ども達に要求されるものであり,そもそも子ども達は初めから,元始的なものであるかもしれませんが,自己の考えを外部に発信するスキルを身につけていると考えてもよいでしょう。

となると,学び方もこれまでとは違ってきます。漢字を例にとってみましょう。漢字を正しく読んだり書いたりする力は,先人の文化遺産をつかみ取り,自己の考えを発信するために必要な基礎的学力です。ですから,学校でも力を入れて指導してきました。しかしながら,多くの子ども達は期待される学力を身につけ,自己の考えを発信する機会を得る前に,学力のない子とレッテルを張られて脱落します。これに対して,これからの子ども達に求められるのは,いつでも身近なところに辞書を持っていて,漢字が分からないときは直ぐに引けるようにすることです。漢字の読み書きをたくさん知っているから学力が高いのではなく,漢字を正しく読み書きすることが大切であることを認識していて,そのための対策を自分でたてられることが学力の証になります。通勤の鞄のなかに辞書の一冊も入っていない教師は,子どもよりも漢字を知っていても,これからは学力があるとはいえないのです。

他人のまねでない自己のユニークな思索の過程がなければ,他者への発信はできません。そのためには,教師の話や教科書を唯一の情報源とするような授業では間に合いません。教師の知らない情報を集めたり,教師とは違った結論さえ導くようになるためには,図書館の充実が必要であり,とりわけリファレンスサービスのための司書の働きが欠かせません。教師の仕事は自分が知っていることを子ども達に一斉に伝えることではなく,個々の子どものために情報の交通整理をすることへと変わっていきます。コンピュータのネットワークにより自校にない資料も他の学校や機関から入手できる体制を整える必要があります。現在の学校図書館がこうした機能を果たしていないのは,教師が子どもに教える仕事しかしておらず,他の大人に対して自身が情報のユニークな発信源になるような仕事をしていないためではないでしょうか。学校図書館は子どもの教育用だけでなく,教師の教育研究活動にも役にたつように整備されることが期待されます。

くどいようですが,たくさん知識を蓄え


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