福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -009/038page

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1 今 求 め ら れ て い る 数 学 の 授 業


(1) はじめに

「直観的に見通す力」の育成と「論理的に考える力」の伸長とは,いつの時代においても数学教育の根底をなすものである。

したがって,「何のために数学を教えるのか」という視点に立って数学の授業を考えたとき,教科書を教えることに追われたり,教師が一方的に解決過程を説明したりしてしまうような指導では,数学教育の目指す目標は達成されないだろう。

また,「最近の生徒は考えることが嫌いになった」とか「すぐに答えを知りたがる」ということをよく耳にするが,むしろ,日々の授業の中で教師自身がこのような生徒をつくり上げてしまっていたのではないだろうか。

こうした点を踏まえて,今求められている数学の授業のあるべき姿とはどういうものかを考えてみたい。

(2) 情意面を重視した授業

数学の授業の展開として,「基礎的なこと」を丁寧に救えてから,「ではこれを使って次の問題を解きなさい」というスタイルが多く見られる。

しかし,このような授業の中で生徒は本当に考えて問題を解いているのだろうか。

私たちが本当に考え新しい知識を身につけるのは,困難にぷつかり,それを乗り越える必要に迫られたときであることが多い。また,「オヤ?何だろう」という状況に直面したとき,「なぜ?どうして?」という深究心が生じ,思考を始める。このちょっとした瞬間ともいえる場面をいかに捉え,集団の中で一人一人の個を生かしながら授業を展開していくかが,考える力を育てる数学の授業のポイントである。

したがって,まず日頃の授業展開において心掛けねばならないことは,「オヤ?何だろう」という状況をつくり出すことである。そのためには,次のような段階を踏まえた授業の展開が考えられる。

授業の過程 生徒の心情
1. 問題の提示・・・・・・ (オヤ?何だろう)
2. 課題の明確化・・・・ (考えてみよう)
3. 解決の見通し・・・・ (たぶん〜だろう)
4. 課題の解決・・・・・・ (なるほど,わかった)
5. 解決の振り返り・・ (〜の考え方はいいなあ)
6. 適用・発展・・・・・・ (この問題はどうだろう)

生徒が「オヤ?」という感じをもつのは,いままでは「あたりまえ」と思っていたことがゆさぶられたり,自分の考えとちがう考えが出されたりしたときなどである。はじめにこのような気持ちを生じさせるような問題の提示を工夫することがポイントである。このことによって,生徒は課題意識を明確にもつことができる。

次に生徒は直観的に見通しを立てるだろう。その見通しによって問題を解決しようとするとき,「さらに〜をはっきりしたい」という課題が生じることが多い。それを問題の中に意図的に含ませておき,課題として明確化し,解決させるのである。つまり


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