福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -014/038page
ある。
2. 実際の場面であること
コミュニケーションのための練習だけでなく,コミュニケーションそのものであることが必要である。そうした場面を授業に設定することにより.生徒は英語が文法や文型等を理解するためだけのものではなく,コミュニケーションの手段であることを体で感じ取るのである。
なお,配慮事項としては既習の言語材料,未習の言語材料,文化等に対する理解の程度,生徒の特性等を授業前に十分に把握し,それらを意図的,効果的に指導過程の中に位置付けておくことが必要である。
(3) INTERACTION を取リ入れる工夫新教材の導入を例に取り上げてみよう。
下記の例は中学3年生の授業であり,下線部の受け身形が本時のターゲットセンテンスである。
Teacher :I'm very sad today. Student 1 :Why? Teacher :Look at this newspaper. Do you know Air Jordan? Student 2 :Yes.Michael Jordan. Student 3 :He is a basketball player. Teacher :Yes. Basketball is very popular in America and he is a superstar. I like him. Student 4 :Me, too! Teacher :He is loved by everyone. But he will not play basketball any more.Do you want to know why? (以下略)
ともすれば新教材の理解をスムーズにさせるためだけの導入になりがちであるが,このステージでは先生と生徒の間にコミュニケーションの本質であるInteraction が生じている。パスケットポールというスポーツ文化にも触れながら,生徒を話題の中に引き入れ,生徒は新教材という学習活動のステージで,言語活動を通して参加しているのである。
この導入が更に進めぱ,引退のきっかけとなった“Because his father was killed.”も提示され,Jordan の考え方や見方の具体例にも触れることになるであろう。こうした授業の在り方は話すこと,聞くことだけでなく,読むこと,書くことにも適応できる。
教師が授業をこのような形で展開するには英語の知識だけでなく,英語教育の目指すものをしっかりと踏まえ,授業に十分に反映させることが大切である。
(4) おわりに英語の授業といえば,ややもすれば暗記,理解が中心になり,暗記のための暗記,理解のための理解に陥りがちである。学習活動の中に言語活動を,そして言語活動の中に学習活動も含めた,授業の過程を工夫する必要がある。そうすることによって英語の知識・理解と運用力が相互に影響しあいながら,総合的な力として定着するのである。この力は授業を離れた場面においても発揮されることが期待できる。
(学習指導部 英語科)