福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -017/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

5 新 授 業 : 結 び


前回の「学力向上」に続き,今回は「授業」を取り上げ特集した。

奥田眞丈氏は,学校教育の課題として「これからの学校教育は,知識中心や点数中心の考え方だけに偏らず,むしろそれを脱却して,子どもたち一人一人が生活していくにあたり,それがどんな社会であっても,また,どんな社会に変化しようとも,人間としての生き方を自覚し,主体性をもって,積極的に立ち向かっていける心と能力とを確実に身につけるようにすること」と設定している。そして,これらの課題解決策は,学校教育の日常的実践の核となっている「授業」にあると述べている。また「授業」が「みな同じ主義から,児童生徒一人一人に目を向けるもの」に変わらなければならない。それが新学力観に基づく「授業」の在り方なのであると述べている。

この「授業」の在り方が個々の学校に根づいたとき,学校は確実に変わるものと思われる。


今回の特集は,まず,巻頭論説で県の教育事情を知り尽くしておられる東京学芸大学の河野義章先生の貴重な提言をいただいた。この中で,先生は「教師が話すことが授業でないことを知ってほしい」と述ベられ,県内の児童生徒の学習に直接かかわられた経験から「生徒の study skills 」の必要性に触れられている。また,「子どもが確かに学んだという自覚を持てるようになることが,授業の基本である」との観点から,授業の在り方について二つの提言(「細やかな授業」「しなやかな授業」)をいただいた。

そして,最後に県の学力向上にも触れられ,上位の生徒の伸ぴがよくない点と,中位以下の生徒の問題点を指摘され,その改善の方法として,「自分と授業との係わりについての自己洞察の機会を与えるプログラムが必要」と説いておられる。

「教育(授業)はファジィーなもの。ねらい通りの結果には,なかなかならないもの」は先生の口癖である。だから,個々の教師の 真学力 ・・・ の向上を目指す「授業観」の確立が望まれているのである。


特集II では,各教科レべルでの「新しい授業」への考え方のいくつかを紹介するとともに,全国で先導的に授業研究に取り組んでいる学校等を紹介した。いずれの研究実践も「子どもと学習(授業)」との関係を追究し,「新しい授業」への在り方を生み出しており, 真学力 ・・・ の向上を目指す「新しい授業の創造」へ,多くの示唆を与えるものであると確信している。

次回は,授業を構成する重要な要素の一つである「教材」を取り上げ,特集を組む予定である。

(参考文献)

初等教育資料9月号
教育展望研究紀要60号


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。