福島県教育センター所報ふくしま No.112(H06/1994.10) -028/038page
き基本的生活習慣が身についていない。
○ 新しい事柄の理解が遅く,知的な学習をすることが困難である。
○ 学級集団内では自分勝手な行動が目立ち,友達との関係をうまく結ぶことができない。
2. 資 料
(1) 本人に関する資料
○ 両親共働きのため,入園前まで母方の祖母が養育の中心であった。入園後も室内での一人遊びが多く,外で友達と遊ぶという経験はほとんどなかった。
○ ひらがなは全部読み書きできるが,知的な能力はかなり低い。(WISC‐R 知能検査によると全IQ52 言語性IQ74 動作性IQ43)
○ 明るく活発であるが,幼稚な言動が多く見られる。
○ S−M社会生活能力検査によると,生活年令と社会生活年令に2年以上の開きがある。特に,衣服の着脱などの身辺自立に関する生活能力が劣っている。
○ ソシオメトリックテストの結果
・被選択 3名 ・被排斥 16名
・排斥する理由としては,身の回りの整理が自分でできないことをあげている児童が多い。(2) 家族に関する資料
○ 父親は勤務時間が不規則で,M男との接触が少なく,一緒に遊んでやるということがほとんどない。
○ 親子関係診断検査によると,母親は,保護的傾向が強い。子どもに細々とした世話をやき,出来るだけの助力や指示を与えようとするタイプである。
3. 診 断
M男はひとりっ子として,強い親の期待を受けて育てられ,親の養育態度が過干渉過保護になっていき,このことがM男の発達を妨げる一つの要因になったと考えられる。さらにM男に基本的生活習慣を定着させるには能力的に難しい面もあったと思われる。また,幼少時から近隣の友達と遊ぶという経験がほとんどないままに育ったために,集団の中でうまく適応していくことが困難になったと考えられる。
4. 指導援助の方向
M男に対し,形成化法とトークンエコノミー法を取り入れて,特に問題となっている衣服の着脱の確立を図り,学級のみんなから認められ受けいられるような指導援助を行うことによって,衣服の着脱の生活習慣を定着させ,徐々に集団生活にも適応できるようにする。
5. 指導援助の方法
(1) 「運動着を正しく着て,脱いだ洋服の後片付けをする」という目標行動を設定する。目標行動にいたるまでに段階的に6つの行動ステップを設定し,それぞれのステップの行動を強化しながら最終的に目標行動を獲得させていく。
(2) 「Mちゃんがんばりノート」を作成しM男自身にそれぞれのステップの目標行動を記入させ,自分の行動改善を図っていくことを意識させる。
(3) 望ましい行動が見られたときは,M男