福島県教育センター所報ふくしま No.114(H07/1995.3) -003/038page
当然とはいえ,いずれの教料(・科目)とも,学習指導要領には,精選された基礎的・基本的な内容が明示されていると考えれば,指導内容について,多面的・多角的な学習活動を通して,実証的・具体的な学習を行い,学習成果を確実に身に付けさせる授業を行う必要がある。その際,学力として習得することは,社会の変化に自ら主体的に対応できる心豊かな人間の育成を図るようにするため,学習活動を通して,知識・技能に偏ることなく,生活していく上で必要となる資質や能力,個性的な見方や考え方などを重視していく必要がある。
教科(・科目)の履修が入試制度の影響を強く受けるとは言え,将来を見通せば,社会の変化に自ら主体的に対応できる心豊かな人間の育成が重視されているので,授 業についてはその趣旨を実現できるように改善を図ることは重要な課題である。
2 豊かな学力の育成の推進
新しい学力観に基づく学力の育成を図る上で,教育課程の基準の改善のねらいに示された事柄で言えば,「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」が重視されている。これは簡潔に示せば「学ぶ意欲と主体的な対応力の育成」となるが,現在,学ぶ意欲と主体的な対応力とが一体となってとらえられていないところに問題がある。この原因の一つは,学ぶ意欲を重視しているものの,それを観点別学習状況評価の観点の一部に位置付け,他から離してしまったことによるが,大切なことは学ぶ意欲と主体的な対応力とを一体のものとして位置付けその学習成果を上げるようにすることである。
この一体となって生かされる学力こそ心豊かな人間を築く豊かな学力といえる。この豊かな学力とは,別の言い方をすれば,一人一人の行動力・実践力等となって蓄積されるもので,生きて働く力ということができる。当然,学ぶ意欲や主体的な対応力はその中に包含されることになる。
豊かな学力とは,現代的な言い方をすれば,生涯にわたって自ら意欲的に学習することができる資質や能力つまり生涯学習力ということができる。これは,変化する社会にあっても,自らを十分に理解することができ,それを基に行動に移せるようにする力ということができる。実際には,生き方の基礎となり,社会の変化に適合し,その中で自らを理解し,充実感を持って生きていくことができること,時代をリードして生きていくことに満足感を持っことができるようにすることということができる。
豊かな学力となる生涯学習力の育成については,生産者的人間の育成つまり経済的 利潤・物的豊かさ・組織人としての生き方を追求し,それに必要な資質や能力を身に 付けるだけでなく,消費者的人間つまり消費者としてのサービスの享受・精神的豊かさ・人間としての生き方を追求し,それに必要な資質や能力を身に付けることができるようにすることである。従来の教育では,前者の育成に力点を置いたため,現在の生き方を犠牲にし,学校生活では一人一人に