福島県教育センター所報ふくしま No.114(H07/1995.3) -006/038page

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は,コップを例にだし,今の学生は,この コップは手に持ちやすくガラス製で,180立方センチメートルの容積であるというよ うな説明,これは構能的な説明になるというが,それを容易に行える教育は受けてい るという。しかし,現在の学生は機能的な説明を行う能力を発揮できるようにする教 育を受けていても,感性を刺激する教育は受けていないので,ものを見てもその背景 にある雰囲気を言葉にする能力は育っていないと指摘している。そのため,優秀な学 力を持っていても,論述式,感想文を求めるテストとなると極端に苦手意識を持つ学 生が多いことをあげ,感性は,情報化社会に必要な能力である発見と創造の能力の基礎となることから,感性を豊かにする教育が重要であると指摘している。

 なお,この感性とは,外界の刺激に応じて感覚・知覚を生ずる感覚器官の感受性(広辞苑)とあり,個人によって異なるところに特色がある。

 感性の重視については,建築家ばかりでなく,文筆家のなかにも認められる。例えば,辰濃和男氏の場合,文章に表現するに当たって,感覚を重視しているが,この考え方は,先のように感性とは感覚器官の感受性ととらえると,感性を重視していると解釈することができる。辰濃氏は,文章を書くに当たって,準備段階では素材の収集が必要であることを指摘しているが,そのなかで,感覚を重視している。つまり,文章を書くに当たって,その準備段階の心構えとして「広場無欲感」,書く上での基本的に大切なこととして「平均遊具品」及び表現上の心構えとして「整正新選流」と謎めいた言葉を用いている。

 このうち,文章を書くに当たって,準備 段階の心構えとして,素材の収集が重要であることを指摘し,「広場無欲感」という見出しを取っている。これはどういうことかというと,情報は広い範囲から収集することあるいは構想は広く描くこと,現場に行って,状況を見て・見て・見ること,無心つまり先入観をもたず,白紙で接すること,書きたい・伝えたい・表現したいという意欲を持ったのを重視すること,感じた ことを表現することが重要であることを強調し,それぞれの重要な言葉を取り上げ「広場無欲感」と述べている。

 このうち,感覚については,表現したい情報を感覚を通してとらえることを重視している。この場合,感覚とは視覚,臭覚, 触覚,聴覚,味覚を言い,五感のそれぞれを通した表現を大切にする必要があると指摘している。例えば,視覚を通した色の表現をしようとすれば,対象の変化,例えば海の色の変化について具体的に表現すること,また,対象の色彩を植物名で具体的に表現することを考えただけでも,多様な表現ができることから,それぞれの感覚を働かせるということっまり感覚を磨くこととそれぞれの感覚でとらえたことを表現してみることつまり感覚の表現を磨くことが大 切であると指摘している。

 なお,先述の謎めいた残りの表現についても,文章表現上の基本と心構えを述べて


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