福島県教育センター所報ふくしま No.114(H07/1995.3) -019/038page
[まとめ]
現在,本県では「学力向上」が大きな教育課題である。
この「学力」が,‘新しい学力観’に立つ児童生徒の主体的で根源的な学びの力であることは,言うまでもない。 しかしその一方 本県の高校生の上級学校進学に対応する学力について,低迷が懸念されていることも周知のことであろう。
この二つのことは,別なことではなく「進学に対応する学力」は,児童生徒の主体的で根源的な学びの力の一つの表れであり,一部である。また,「進路実現」は,児童生徒の目指すべき自己実現の一つであり,それを視野に入れて指導上の工夫を図っていくことは,当然すぎるほど当然なことであろう。
今回の調査は,「中学生」という小学校と高等学校の結節点にあって,しかも発達段階的に最も指導の困難な,思春期の入り口にある生徒たちを対象に行ったものである。この時期の生徒たちの学習に対する意識と行動を分析し,理解していくことが「学力向上」という課題に応える上で不可欠と考えられたからである。
最後に,今回の調査を終えての結論を二つ述べたい。
まず第−には,本県の中学生の学習に対する自主的・主体的な態度の育成については,開発の余地が十二分にある,ということである。
アンケート調査の端々には,生徒たちが本来持っている向上心、と現実に実行できないでいる自らの不甲斐なさに対する反省がにじみ出ているように感じられる。この秘められた意欲を行動化できるように指導していくことが強く望まれよう。
二つ目には,中学校1年における学習の重要性である。ここでの学習がその後の学習に与える影響の大きさは,もっと注目されて良いように思われる。小学校からの学習課題がここでも達成されず,さらに新たな未達成の学習課題を抱え込むとき,生徒たちは急激に意欲を失うのである。2年生における落ち込みと見えるものの本質には,このような背景があるものと考えられるのである。
児童生徒一人一人を理解していくことはたやすいことではない。しかし.「学力向上」も含め,教育の本質がその基礎の上にしかなり立たぬものであることを十分にかみしめる必要があるのである。