福島県教育センター所報ふくしま No.115(H07/1995.7) -007/042page
実しかないという考えに基いたものであった。
このような教育観に立つ学校教育は,まず,西洋先進諸国の文明の受容からスタートした。したがって,学校教育で最も重視されたものは,先進諸国の学問や技術の受容,つまり,知識・理解,技能を身につけさせることであり,学んだ証しは,それらの確かさであった。
この考え方は,「学制」以来,今日までの百二 十余年及ぶ国民教育(学校教育)の主流を占め てきた。第2次大戦後,わが国の教育は大きく変 わったと言われるが,この百二十余年を見つめ直 してみれば,時代時代で若干の重点の置き方に差 は見られるが, 学校教育で最も重視されてきたものは,知識であり,技能 であった。そして,学校 教育の中核をなす日々の授業では,「知識や技能 をしっかり身につけさせること,覚えさせること」 また,それを再生できるようにすることが極めて 重視された。
世界各国が目を見張るほどの勢いで伸びてきたわが国の産業,経済の発展は,百二十年にわたるこのような国民教育の成果であることは誰しもが認めるところであろう。
「授業が変わらない」ことの背景に,わが国の近代国家形成のためにこれまで果たしてきたこのような「学校教育の使命」が根底にあることを強調しなければならない。
また,今強く叫ばれている「新しい学力観に立つ学校教育・学習指導の推進」は, これからの日本の教育が,「知識・技能重視の学校教育観」から脱却し,新たな方向を目指して始動した ととらえることができるのである。
児童・生徒の個性・よさを重視し,関心・意欲・態度を育て,思考力,判断力,表現力などの諸能力をはたらかせながら,どの子も確かな技能,知識・理解を身につけることができる学習指導が強く求められている背景は,ここにある。
(2)多くの要素が絡み合う「総合的な仕事」
実際に学校をよく見ると,学校のつくりも,教室のつくりも今述べたような理由で教える側にたって考えられた構造を持つ。
しかし,最近,オープンスペースの学校ができ,コンピュータの導入も進む一方,児童・生徒数の減少で空き教室も多くなり,多様な学習活動を取り入れる学習空間も増えてきたのに,授業が変わらない。それはなぜか。授業は,「多くの要素が絡み合う総合的な仕事」だからである。
授業は, 「目標」「教師」「児童・生徒」「教材」 の 4つの構成要素 から成り立っている。
一時間,小単元,単元の指導においても,授業 は,この4つの要素から構想され,展開される。 しかし,実際には指導過程に沿って,教師は更に 発問,指名,板書など細かい事がらに配慮して授 業を行わなければならない。
例えば,単元全体の展開を構想するに当たっては,本単元の目標(基本的には学習指導要領の目標・内容のレベルで抑えることにして)に迫るために,教師は,児童・生徒の実態を,興味・関心知識・理解,思考力等の諸能力の程度,学習の進め方の傾向性などから見つめ直す。そして,この子どもたちにとってどんな教材でどんな内容を,どんな活動をどのくらいの時間で行わせて,教え,学ばせるかを考える。教材,活動,時間どれもが教える教師の側からと,学ぶ児童・生徒の側から