福島県教育センター所報ふくしま No.115(H07/1995.7) -022/042page
(5)学校の取り組み
全職員で,担任を支える体制を整え,いじめの解決に努めた。更に,善後策として,全家庭に対して人権擁護の立場からも,いじめ問題への理解を呼びかけた。
全校体制での担任支援 ために,次のことを実 践した。
・S子への温かい言葉かけ,見守り
・A子たちの不満や不安解消への援助
・学級の人間関係づくりの資料提供
・学年主任の家庭訪問への同行
全家庭に対し, いじめ問題への理解 を深めても らうため,以下の方法をとった。
・学年通信,PTA会合での啓蒙活動5 まとめ
本事例では,担任が,「仲間はずれ」「無視」 を受けていたS子の孤立にいち早く気づき,全校 を挙げての支援体制に支えられながら迅速かつ適 切に対応したため,いじめは深刻化せずに解決し ました。また,問題行動の解消という表層的な解 決に留まらずに,「観衆」や「傍観者」のいない 学級づくり,家庭への人権擁護の啓蒙にまで指導 援助を進めたことは,いじめの根本的な解決,す なわち,今後のいじめ防止への取り組みとして有 効であったと考えられます。
S子は仲間の輪の中に戻りました。学級も元の 明るい雰囲気を取り戻しています。
「仲間はずれ」「無視」型のいじめに対する児童生徒への指導援助の留意点 ○ この型のいじめでは,いじめられている側は,身体的な外傷は負わないが,「狐立」という 見 えにくく深い心理的な傷を負う。意識的な観察によって早期発見に努め,その辛さを十分 に受け止め支えていく必要がある。
○ いじめている側は,暴力や強制を伴わないため,他の型のいじめに比べいっそういじめの 意識が薄い。いじめる側の不満や不安という心の問題を解消すると同時に,いじめられてい る側の心の痛みにも目を向けさせる指導援助が必要である。また,ストレスの多い現在の 社会では,対象を替えて繰り返される根の深いいじめであるため,事後の観察を怠らない ようにすることが肝心である。
○ 周囲の子どもたちも,いじめる側に安易に加担する傾向がこの型では強い。日常から「観 衆」や「傍観者」を生まない学級づくりを推進することが,予防策として大切である。
○ 教師や保護者も,この型のいじめには,「強くなれ」「暴力を受けた(振るった)わけではな い」など,誤った対応をとる場合がある。心身が傷つく行為は全ていじめであると認識し,適 切に対応すべきである。