福島県教育センター所報ふくしま No.115(H07/1995.7) -035/042page
研修者研究報告
説明的文章の学習における興味・関心を高める指導の工夫
〜壁新聞づくりを学習目標として〜
須賀川市立第一中学校教諭 高 崎 則 行
I 研究の趣旨
説明的文章の学習に対する興味・関心は,文学的文章など他の文種に比べて相対的に低く,説明的文章の学習達成状況にもそのことが影響している現状である。
説明的文章の読みには,「新しい知識、有益な情報を獲得した」「筆者のものの見方や考え方,探求の姿勢に感銘した」「筆者の論理の明快さが胸に落ちた」という喜びがある。そのような説明的文章の本来の喜びを大切にして,生徒の学習意欲を引き出し,主体的な読みを促す学習活動を展開したい。そのため,生徒の側に立って学習目標を設定し,学習目標達成のための学習活動の中に読解能力の伸長を意図した活動を調和させようと考えた。
II 研究仮説
1 仮説
説明的文章の学習において,教材の話題や内容にかかわる新聞作りを学習目標として提示し,その記事を書くために読解学習をさせれば,興味・関心をもって主体的に学習に取り組めるであろう。
2 仮説に関わる概念規定
(1) 「教材の話題や内容に関わる壁新聞づくりを学習目標として」とは
- 教材分の内容を紹介する記事、主張(自分の考え)、発展的な読書の内容紹介の3つを柱として編集する新聞作りを学習目標とする。
(2) 「その記事を書くために読解学習をさせる」とは
- 教材文の内容を紹介する記事は,トップ記事として「見出し」「リード」「本文」の3要素で構成させる。教材の内容を正確に、かつ効果的に紹介するために、以下の読解学習を組織する。
○「見出し」を適切な表現にするために段落や文章全体の話題や展開を捉える学習を行う。
○「リード」を過不足なくまとめるために要旨を捉える学習を行う。
○「本文」を必要に応じてまとめるために要約の学習を行う。
また、内容のある「主張」を書くためにものの見方や考え方を深める学習活動を取り入れる。
(3) 「興味・関心をもって主体的に学習に取り組む」とは
教材の内容または学習活動に知的好奇心を感じ自力で文章を検討したり,考えをまとめたりしようとする姿を指す。
III 検証授業の計画と実践の概要
- 単元名 五 現代社会を考える(3年) −(教材名)「金星大気の教えるもの」
- 単元の目標 (略)
- 指導計画(総時数 8時間)
次 時 主な学習活動 指導上の留意点 1 1
- 全文を通読し、初発の感想を書く。
- 新聞記事の編集の仕方と一般的な構成を理解し、学習計画を立てる。
- 学習目標「環境新聞作り」に興味意欲づけを図る。
- 「見出し」は段落の話題や文章構成を捉える能力、「リード」は要旨を捉える能力、「本文」は要約する能力に対応することを理解させる。
2 2
- 疑問点を出し合い、グループ内で整理、類型化する。
- 各段落の中心的な話題に関わる疑問とその他の疑問に大別する。
- 各段落の中心的話題に注目し、文章展開を捉える。
- 初発の感想を提示し、学習に関連づけて意欲を喚起する。
- 主体的に学習に取り組めるようワークシートを工夫したり、個に応じた支援に努める。
3
- 各段落の中心的話題に関わるものでない疑問について自力で解決し、話し合いによって確かめる。
- 学習成果や努力の過程を積極的に評価し、成就感や有能感を味わわせる。
- 自己評価、相互評価を生かして、自分の考えを練り上げさせる。
4 【検証授業1】
- 各段落の中心的な話題に関わる疑問に対応させて要約する。
- グループ内で要約文を検討し,全体で話し合う。